2020年7月10日金曜日

滋賀県大津市中庄の「篠津神社」は江戸時代には「膳所藩」の歴代藩主の崇敬が長く続きました

滋賀県大津市中庄の住宅街の中に「篠津神社」は鎮座しています。古くには「大梵天王」と号して、「天王社」または「天王宮」と呼ばれ「産土神」として庶民の信仰を集めていました。江戸時代に入ると、「徳川家康」の指示で設立された「膳所藩」の歴代藩主の崇敬は篤く、特に最も長く13代220年にわたって藩主を務めた本多家は、社領の寄進や本殿の造営、社殿の改修も行うなど、「篠津神社」は手厚く護られてきました。

篠津神社 本殿

篠津神社(しのづじんじゃ)御由緒

名 称 
篠津神社(しのづじんじゃ)

御祭神 
素戔嗚尊(すさのおのみこと・伊弉諾命と伊弉冉命の子・天照大神の兄) 

創 建
創建年代不詳(室町時代以前)

御神紋
瓜紋 左三ツ巴

社格等
県社

境内社
・少彦名社  
 御祭神:少彦名神(すくなびこなのかみ)

・高龗社  
 御祭神:高龗神(たかおかみのかみ)

・六社(本殿に向かって左) 
 御祭神:左から
 白鳥神  :日本武尊(やまとたけるのみこと)
 菊理姫神 :菊理姫命(きくりひめのみこと)
 松尾神  :大山咋神(おおやまぐいのかみ)
 熊野樟日神:熊野樟日命(くまののくすびのみこと)
 活津彦根神:活津彦根命(いくつひこねのみこと)
 天津彦根神:天津彦根命(あまつひこねのみこと)

・六社(本殿に向かって右) 
 御祭神:左から
 倉稲魂神 :倉稲魂命(うかのみちまのみこと・稲荷神)
 天穂日神 :天穂日命(あまのほひのみこと)
 天忍穂耳神:天忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)
 市杵島姫神:市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)
 多岐津姫神:多岐津姫命(たぎつひめのみこと)
 多岐理姫神:多岐理姫命(たきりびめのみこと)

例祭他
例大祭(5月3日)
祇園祭(夏祭り・7月・神輿渡御)

ご利益
・水難、火難、病難除去、五穀豊穣、縁結び、厄除け、子孫繁栄、家内安全、商売繁盛

所在地
滋賀県大津市中庄1-14-24

一之鳥居

「篠津神社」は、創建年代は不詳ですが、室町時代中期の康正2年(1456年)の棟札が現存していることから、室町時代時代中頃には鎮座していたことは確実となっています。

「篠津神社」は、古くには「大梵天王(だいぼんてんおう・インドの仏教の神)」と号し、
「天王社」と称されていました。後には「天王宮」、更には※1「牛頭天王社(ごずてんのうしゃ)」と改称されましたが、長く「産土神(うぶすながみ・鎮守の神)」として、地域の信仰を集めてきました。

「篠津神社」の夏祭として「祇園祭」が開催されているのは、京都の祇園祭と同様に「牛頭天王」にまつわり、祇園精舎を慰め厄除けを祈願する祭ということですね。

※1牛頭天王は、神仏習合の神で祇園精舎(インド仏教の聖地)の守護神でもあります。また、本社の御祭神の「素戔嗚尊」の本地(権現)であると云われています。

創建後は、「園城寺円満院門跡(三井寺)」の住職で、室町時代の第15代将軍「足利義昭」の孫「常尊法親王(じょうそんほうしんのう)」や、江戸時代後期に天台座主となった「覚淳法親王(かくじゅんほうしんのう)」、更に「有栖川家(ありすがわけ・江戸時代初期から明治にかけての宮家)」など皇族の崇敬が篤く、鳥居や扁額などが寄進され、参拝の記録も残っているそうです。

江戸時代に入ると、「徳川家康」の特命で設立された「膳所藩(ぜぜはん)」の歴代藩主となった「戸田家・菅沼家・石川家・本多家」の崇敬を受けました。特に13代約220年にわたり明治維新まで藩主を務めた「本多家」からは、社領22石の寄進や、本殿の造営、社殿の改修などの支援を受けました。現在の本殿は、膳所藩第2代藩主「本多俊次(ほんだとしつぐ)」が藩主の時代の万治4年(1661年)に造営したものです。

明治元年(1868年)、名称を「篠津神社」に改名しました。


拝殿

本殿拝所

本殿

本殿


表門(高麗門)

「篠津神社」の表門である「高麗門」は、明治維新直後に解体された「膳所城」の北大手門であったものを、明治5年(1872年)に当社に移築したものです。

表門(元膳所城北大手門)

この門は「高麗門形式」で屋根は本瓦葺となっており、丸瓦には本多家の家紋「立葵」が飾られています。扉の横に脇門を付けています。

丸瓦の立葵の家紋

「高麗門」の特色は、背面に特色があり、正面の主体部から両方へ袖のように直角に屋根が出ています。この形式は城門に多く用いられ、桃山時代の城門の形式となっています。この表門は、国の重要文化財に指定されています。

門の主体部から直角に背面に袖上に屋根が出ています

「高麗門」の正面扉には、敵の攻撃を防御するための「鉄板の柵」が貼り付けてあります。

扉の鉄板に柵


境内社

少彦名社・高龗社

左側:少彦名社・右側:高龗社

六社(本殿に向かって左)

六社

六社(本殿に向かって右)

六社


境内その他

槻の大木(けやき・御神木)

槻の大木

社務所

社務所

神饌所

神饌所

神輿庫

神輿庫

手水舎

手水舎


江戸時代初期に造営された格式のある本殿と、膳所城の北大手門を移築したという堂々とした表門など、見ごたえのある神社でした。



アクセス
JR琵琶湖線 石山駅下車 徒歩21分
京阪電車石坂線 中ノ庄駅下車 徒歩3分



0 件のコメント:

コメントを投稿