2020年1月16日木曜日

【裁判傍聴記】今日で薬物を断って自分のやりたい事を目指していきたい

被告人は令和元年6月に少年院を仮退院して後に20歳になったばかりでしたが、12月に大麻所持の現行犯で逮捕されました。被告人は「クラブ」で特殊詐欺に誘われて、受け子として逮捕され少年院に入所しましたが、少年院で「コミュニケーション力」と「文章力」を学んだと言い、今回の事件での社会復帰後は「薬物を断って仕事を続けていく」と誓いました。

「大麻使用者」の画像検索結果
資料写真(Pixabay)


罪 状 大麻取締法違反
被告人 20歳 男性
求 刑 懲役6月 大麻2袋没収


事件の概要

平成元年12月×日深夜、警ら中の警察官は、路上で被告人と共犯者Aが乗った不審な車に気付き職務質問したところ、車内から乾燥大麻の入った袋を発見し、試薬検査の結果大麻であることが判明したため、被告人と共犯者Aを「大麻取締法違反」の現行犯で逮捕したものです。後の被告人の警察での供述から、大麻は10月に密売人から購入し、これを共犯者Aと共謀して車内で使用しましたが、今回発見された大麻はその時のものが残っていたものであるということが判明しました。

被告人は、地元の中学を卒業後、職を転々として現在は契約社員として働いていました。少年時に非行歴が2件あります。被告人は16才から大麻を使用し、その後共犯者Aにすすめて、Aが密売人から大麻を手に入れてくると共謀して大麻を使用するということを繰り返していました。警察での供述では、大麻以外にも様々な薬物を使用したこと、それらをAにもすすめたことも供述しています。

被告人は、どんな時に大麻を使用するのかとの問いに、「友達と遊んでいるとき」「ごはんを食べに行くとき」「音楽を聴く前」と答え、大麻を使用すると高揚感が出てそれらのことが気分良くなるからと答えています。またレゲエが好きで、友達と一緒にレゲエを楽しむ時に使用したとも供述しています。

弁護人が書証として提出した被告人の反省文の中で、「薬物を断ちます。仕事をしてベースをつくります。彼女がいるので大切にします。薬物をやっている時間がもったいないので断ちます。そしてこれからはカッコいい大人になります。」として薬物を断つ意気込みを訴えています。


被告人質問

弁護人
少年院を出た後、16才で大麻を吸い始めた頃の先輩との付き合いは?
被告人
ありません。連絡先も知りません。

弁護人
少年院を仮退院して2年以上やめていた大麻を何故使ったのですか。
被告人
Aがすすめてきました。吸うだけなら問題ないだろうと思い、前の日に大麻を買って翌日にAと一緒に吸いました。大麻はAから買いました。

弁護人
今後Aとの付き合いはどうする?
被告人
Aとは付き合いません。このままだと繰り返しかねないので、今後は地元を離れます。社会復帰後は彼女の元へ行きます。

弁護人
社会復帰後はどうするつもりですか。
被告人
地元を離れ遠いところへ行って働きたいと考えています。誰も知らないところの方が危機感を持てると思います。

弁護人
今後また大麻を吸うことは?
被告人
彼女もいるので吸いません。留置場に入ってみてこんなことをしているのは時間の無駄だと強く感じました。そしてもし次吸ったら「次は無い」という危機感を感じました。

弁護人
廻りの人に迷惑をかけた?
被告人
廻りの信じていてくれた友人の信頼を裏切りました。家でも元々信頼はありませんでしたが、今回のことで取り返しのつかないことになりました。

弁護人
お母さんが面会に来てくれましたね。
被告人
申し訳ないと思っています。お母さんにはこの先結果を出してから話したい。仕送りも考えています。

弁護人
今後の仕事のあてはあるのか?
被告人
彼女の元で住むつもりです。彼女がネットで調べてくれた人材派遣に登録して働きたいと思っています。

弁護人
社会復帰条件に保護観察が付いた場合、生活に支障が出ることがあるが受け入れられるか。
被告人
保護観察を受けて、自分の生活を厳しく対応できると思います。

検察官
日常的に大麻を使っていたのか?
被告人
使っていません。大麻パーティーなどで使いました。大麻を周囲に広めたという自覚はあります。これからは大麻と関わる人間を絶って、自分を大麻を使わない状況に追い込みます。

裁判長
一人で大麻を使うことは?
被告人
少年院を仮退院後は一人では使っていません。自分はレゲエが好きなので、友達と一緒にレゲエを楽しみときに使いました。

裁判長
マリファナを吸いたいときはどうする?
被告人
ネットでも手に入ります。

裁判長
今後はどうしたいのか?
被告人
仕事をして貯金して、営業の仕事をしたいと思っています。

裁判長
少年院に入ることになった特殊詐欺の仲間と関係は続いているのか?
被告人
つかまって連絡を絶ちました。彼らとは「クラブ」で携帯を渡されただけの浅い関係です。

裁判長
少年院で学んだことはありますか?
被告人
「コミュニケーション力」や「文章力」など学んだことは大きいです。今後は薬物を断ち、仕事は続けていきます。


論告・求刑

論告
被告人は大麻を少年時代から使用しており、逮捕前にも週に1~2回使用していた。大麻を周囲に広めた事は悪質で、再犯の可能性も高い

求刑
被告人に懲役6月を求刑する。大麻入りビニール袋2袋を没収する。


弁護人最終弁論

被告人は大麻使用を反省しています。大麻の所持量も少なく、被告人の大麻に対する親和性、依存性は少なく、高い程度ではないと云えます。自らが単独で大麻をしようしたものではないということも情状に有利に働きます。被告人は薬物を断つと決意しており、勤労意欲は高いと云えます。以上から被告人には「保護観察付」の判決を希望するものです。
なお、検察官ご指摘の再犯の可能性については低いものと思料します。


被告人最終陳述

今日を最後にして、薬物を断って自分のやりたい事を目指していきたい。


裁判の向う側

被告人は被告人質問ではっきりと、そして20才という年齢にしてはしっかりと答えていました。薬物を断つこと、これから真面目に仕事をして貯金をし、生活のベースをつくっていきたいこと。そしてやりたいことに向けて努力していきたいこと。彼女のためにも更生していくこと。保護観察がついても窮屈に思わず自身を律していく助けとしたいこと。悪い関係を絶ち、廻りの環境を整えていくことなどと主張していました。

私は彼が薬物を断って、更生の道を歩んでくれると信じられると感じました。世間では社会性の乏しい若者が多い中で、彼は20才にしてはしっかりとした考えをもって、しっかり意見を述べていました。少年時代に道を外した彼ですが、彼女と一緒に更生の道を歩んでくれることに期待します。

傍聴席には被告人の彼女と思しき女性が傍聴していました。彼女を泣かせないためにも被告人が更生して真面目に働いていくことを希望します。廻りの社会も彼らを見守る社会であってほしいと思います。

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