2020年1月10日金曜日

岐阜県羽島市の「一乗寺」は「弘法大師空海」が創建した由緒ある寺院です

「一乗寺」岐阜県羽島市の木曽川と長良川に挟まれた地にあって、大変歴史のある寺院です。創建当時は七堂伽藍を備えた立派な寺院であったそうです。境内には「いちょう」の木が植えられ、晩秋には「ぎんなん」のかぐわしい香りが漂います。


一乗寺(いちじょうじ)由緒 


寺 号 小熊山(おぐまさん)一乗寺(いちじょうじ) 

宗 旨 臨済宗妙心寺派

御本尊 阿弥陀如来

創 建 弘仁10年(819年)

開 基 弘法大師 空海(こうぼうだいし くうかい)

再 興 江西祖伝禅師(臨済宗)が万治元年(1658年)に開山

中 興 月空紹長老が元禄10年(1697年)諸堂を再建「中興の開山」と称す

札所等 美濃四国35番札所

所在地 岐阜県羽島市西小熊市4292

参道前の由緒書を参照して、寺院の由緒を記します。

「一乗寺」は、弘仁10年(819年)に「弘法大師空海」の発願によって真言宗の寺院として創建されました。この時期は、空海が勅許を得て高野山を開創すべく伽藍の建立に着手した時期と重なります。

参道
山門はしゃちほこが飾られて威厳を感じます。
山門
本堂
「一乗寺」は開創当時は十八町(約2Km)余歩の広い境内に七堂伽藍を配置していました。

空海は開創時に自ら橋杭(橋桁を支える杭)で「延命地蔵菩薩(えんめいじぞうぼさつ)」を彫って七間(約13m)四方の堂に安置しました。このとき空海は「朽残る真砂の下の橋はしら 又道変えて人わたすなり」と歌を詠まれたということです。この地蔵は「小熊地蔵」と呼ばれ人々の尊崇を集めることとなりました。

時は下って鎌倉時代、時の将軍「源頼朝」は「小熊地蔵」の奇瑞(よいお告げ)を厚く信仰し、文治3年(1187年)武運の祈願をしたところ勝利しましたので、このお礼として本堂を再建しましたが、後に兵火に遭い堂宇を全て焼失しました。このことを霊夢で知った頼朝は、再び伽藍を建築し、更に後の世の手当として千両の団金(千両相当の金の塊)」に「朝日さす 夕日かがやく 木のもとに こがね千両 後の世のたから」と歌を添えて付与したということです。なお、この団金について後の伝承がないことから、埋蔵金となっているとの説があります。

更に時は下って戦国時代、「織田信長」が本拠地を小牧山城から稲葉山城に移転し岐阜城と改めて「天下布武」を目指した頃、「一乗寺」の「小熊地蔵」に霊威のあることを知って、永禄11年(1568年)この菩薩を岐阜へ移しました。ところがその後、天正2年(1574年)3月初めのとある夜に地蔵が信長の枕頭に立って、元の地に帰りたいと告げられました。地蔵を帰すことを惜しんだ信長は、岐阜市内の地蔵のあった場所の地名を「小熊」と改めて現在もその地名を残しています。

その後、「一乗寺」は一時衰退しましたが、万治元年(1658年)に「臨済宗妙心寺派」「江西(こうさい)長老」によって臨済宗の寺院として開山されました。現在安置されている「地蔵菩薩」「慈覚大師(じかくだいし)」の作で、開山した江西長老が「尾張国田嶋村」にあったものを請い受けて「空堂(くうどう)」に移し安置したものです。

空堂
「小熊地蔵」は厨子の中に安置されていますので、拝観できませんでした。

空堂
空堂前の美濃四国35番札所のお砂ふみ所
さらに、貞享2年(1685年)冬の頃、再興後の第三世「月空紹(げっくうしょう)長老」「汝我を信ずる事久し其心何ぞ空しからんや、先の尊像は彼地に在りといへども神此処に在す弥(いよいよ)供養を怠ることなかれ」という霊夢がありました。よって月空紹長老は不二冥合(時空を超えた)の尊像と崇め、元禄10年(1697年)諸堂をことごとく再建しました。これを「一乗寺」の「中興の開山」と称しています。

本堂内陣
本堂の御本尊は拝観できませんでした。

本堂内陣の厨子
鐘楼
「治承・寿永の乱(源平合戦)」における養和元年(1181年)の「墨俣川(現在の長良川)の戦い」では、墨俣から西小熊(一乗寺付近)が主戦場となり多くの戦死者が出ました。この時の戦死者を供養するため誓浄寺(せいじょうじ)と本養寺(ほんようじ)の二つの寺が建立され、多くの五輪墓石が造られましたが、天正14年(1586年)の大洪水でこの二つの寺が流され五輪墓石も散逸してしまいました。その後の境川河川改修工事の際に、川底から多くの五輪墓石が出土したため、その一部が「一乗寺」に無縁墓石として安置され、墨俣川の戦いの激しさを今に伝えています。

空堂前の無縁墓石
無縁墓石を見守る観音菩薩像
境内の一角に「お寺カフェひだまり」があります。喫茶と軽食で営業していますが、ご住職が営業されているのではないそうです。

お寺カフェひだまり
お寺カフェひだまり
最初に紹介しましたように、境内にはイチョウの木が多く植えられています。秋にはその葉が色づき燃えるような景色が広がります。

イチョウの林
イチョウの色づいた葉が落ちるころには、茶碗蒸しに入れておいしい「銀杏(ギンナン)」の実が落果し、あたりにはかぐわしい香りがただよいます。そして山門には「一乗寺ギンナン」として無人販売で売られていました。S袋で300円でした。お安いです。

一乗寺ギンナンの無人販売
参道入口には、羽島市指定有形文化財の「天明地蔵菩薩」が穏やかな表情で参拝者を見守ってくださっています。

天明地蔵菩薩
ご住職のユーモアでしょうか。車乗り入れ禁止の看板の代わりに「下馬」と書かれた木の看板が立てられています。心がなごみます。



長良川と木曽川に挟まれた地ですので、昔から水害にさらされてきたことと思いますが、「一乗寺」はその長い歴史の中で人々の信仰を集めてきたのでしょう。心が落ち着くお寺でした。


アクセス
東海道新幹線 岐阜羽島駅下車 タクシーで約10分
JR東海道本線 大垣駅下車 タクシーで約25分
名神高速道路 岐阜羽島ICから約11分

駐車場は十分ありますので、車でのお出かけも問題ありません。
なお、参拝は8時30分から16時でお願いしますとのことです。



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