70代後半の男性被告人は、半年以上も拘置所に拘留されていますが、今回の法廷でも元気に自論を展開して無罪を主張していました。
資料写真(Pixabay) |
被告人:70代後半男性
求 刑:懲役2年
事件の概要
被告人は、平成30年2月から12月の間に、住所地を管轄する消防本部の通信指令室に対し、携帯電話で239回に亘って119番通報を繰り返したものです。
その電話(手口)は下記のようなものでした。
一例:「わざと自宅のテレビを大音量にしたうえ119番通報して通信指令員に話の内容を聞き取れなくする。」この119番通報を立て続けにかける。
一例:「ワン切り電話」を立て続けにかける。
などでした。その他にも様々な手口で119番通報し、被告人からの同様の119番通報は239回になったものです。
前々回の審理で弁護側が主張したのは、次の2点でした。
1.消防本部の通信指令が電話を受けるのは、「公務」であって、法律で保護を受けるべき「業務」ではない。
2.被告人が119番通報したのは、実際に体調が悪かったからで、実際に救急隊員が駆け付けたときには、体調が治っていたので帰ってもらったものである。だから偽計を意図して119番通報したのではない。(実際の救急車の出動も何度かありました。)
※公務員の業務が、「公務」なのか「業務」なのかは過去の判例でも議論が分かれることもあるそうで、「警察のような権力的公務の場合は保護すべき業務にあたらない」とすることが最高裁判決で示されているようです。被告人は以前にも警察の通信指令に同様に偽計を用いて110番通報をして実刑判決を受けていますので、この議論をある程度分かったうえで今回も119番通報していますので、確信犯的な犯行を意図しているのでしょうか?
前々回の裁判の審理で、検察側が申請した証拠のうち「消防本部の通信指令室の職員の供述調書」について、弁護側が不同意としたため、前回の裁判の審理では「消防本部の通信司令室の職員」に対する証人訊問が行われ、合わせて被告人質問も行われました。(残念ながら傍聴できていませんが)
今回の裁判の審理では、検察側の「論告求刑」と「弁護人最終弁論」、「被告人最終陳述」が行われ、本日で結審して次回期日で判決言い渡しということになりました。
被告人と弁護人は、119番通報したことは認めるがこの行為は偽計にあたらないと主張している。また、消防本部の通信指令が119番通報を受けることは公務であって、業務にあたらないと主張している。
しかしながら、被告人が119番に電話した架電行為は、「欺罔」「計略」「策略」「いたずら」行為であり、社会通念上受容し得る限度を超えるものであり、「偽計行為」であることは明白である。
弁護人は、被告人の行為は百歩譲っても「軽犯罪法違反」であると主張するが、消防の業務を妨害し被告人の119番通報に関わるがために、他の119番通報を受けることが出来ないなどの業務に支障があったばかりか、万一の緊急時の対応にも支障が出た可能性もあったものである。
被告人はしんどくなったから119番通報したものであると、故意を否定しているが、「無言電話」や「テレビの音量を大きくして電話する」などの非常識な行為や、入院の必要がないのに119番通報した行為もあり故意であることは明白である。
被告人は、過去に類似の行為で実刑判決を受けているのに、今回同様の行為を行っていることは悪質である。
消防本部の通信指令は、仕事であるため119番通報を受けなければならず、被告人の行為は市民の生死を保つ消防本部の使命を妨害したもので、社会的に非難されるべきものであり、被告人は規範意識が欠如していると言わざるを得ない。
求 刑
被告人に対し懲役2年を求刑する。
弁護人最終弁論
被告人が119番通報したことは認めるが、これは「偽計業務妨害」にあたらないため、被告人は無罪である。
被告人が119番通報したのは、しんどくなって救急車が必要となったからであり、偽計にあたらない。
電話しながらテレビの音量を大きくしたのは、しんどくて話が途絶えたため、消防職員にまだ電話が続いていることを気付いてもらいたかったためである。
数秒間で電話したのも、体調不良を訴えたかったためである。
いずれの行為も故意がなく、「無罪」か最悪でも「軽犯罪法違反」とすべきものである。
次に、高齢の被告人を半年以上も拘留していることは不当であり糾弾されるべきものである。
被告人最終陳述
(大きな声での怒号も含め20分間陳述しました。)
業務妨害は、一般の業務を対象としていて、公務員の仕事は業務ではなく公務である。
私は六法全書を読んで勉強してきた。公務員の仕事は公務であ。消防が119番通報を受けるのも当然の仕事であって公務である。消防本部は公務であるがために被害届を出せなかったことは、このことを証明している。(この主張を3回ほど繰り返し)
・・・裁判長がこれを制し、「次に何か主張したいことは」と問いかけしたので
私は、過去に無免許運転で刑事裁判にかけられ罰金を支払らわされた。道路交通法は刑事事件ではないのに刑事裁判を受けた。警察へ110番通報した件でも、電話を受けるのは警察の公務であるのに「偽計業務妨害」で起訴され、裁判で実刑判決を受けた。デッチ上げを受けた。(この主張を繰り返し)
・・・裁判長が、今は過去の事件ではなく今の事件を審理しているので、過去の事件のことを繰り返し主張するのであれば、発言を中止させるとして、「次になにか主張したいことは」と問いかけしました。
証人訊問で、通信指令室の職員が出てきたのはおかしい。救急車で駆け付けてくれた救急隊員を証人として呼ぶべきである。そのような主張を書いた書面を弁護士に渡したのに、弁護士が裁判所に提出していないのはおかしい。検察官も何も調べていない。
次に弁護士に向かって、怒気を荒げて「なんで自分が言ったことを主張しなかった。面会に来いといったのに来なかったのはなんでや!」と何度も怒鳴りましたので、裁判長がこれを制止しました。「大きな声を出すのはやめなさい。弁護人は弁論のなかであなたの言いたいことを主張していました。あなたがこれ以上大きな声を出すのを続けるようであれば、私の権限で発言を止めさせます。」と制止したため被告人は黙りました。
裁判長が「次に主張したいことは」と言い被告人の陳述を促しましたが、同じことを繰り返しましたので、裁判長は被告人の陳述を打ち切り、次回の「判決言い渡し」の期日調整
に入りました。
裁判の向う側
被告人は半年以上も拘留されていますが、今回の法廷でも大きな声を出して怒鳴っていました。いったい何がしたいのでしょう。相手をとっちめることを楽しみたいのでしょうか。「切れ老人」の典型のような気がします。余生をそこまで犠牲にしていることに「あわれ」を感じます。
確かに「威力業務妨害」や「偽計業務妨害」の判断の中で、「公務」か「業務」かという議論があるようですが、被告人はこの議論をわかったうえで119番通報を繰り返したと認めているのですから、偽計が故意であることは自ら認めているような気がします。
超高齢化社会に突入した中で、身近にも大なり小なりこのような高齢者が存在します。今後も益々増えてくるのでしょう。高齢者は自覚をもって他人に迷惑をかけないよう、「切れ老人」「老害」にならないようありたいものです。
次回判決も傍聴する予定ですので、裁判長がどのような判決を言い渡すのか興味があります。判決言い渡しを受けた被告人がどのような反応を示すのかも興味があります。結果は続報として投稿させていただきますので、楽しみにしていてください。
その電話(手口)は下記のようなものでした。
一例:「わざと自宅のテレビを大音量にしたうえ119番通報して通信指令員に話の内容を聞き取れなくする。」この119番通報を立て続けにかける。
一例:「ワン切り電話」を立て続けにかける。
などでした。その他にも様々な手口で119番通報し、被告人からの同様の119番通報は239回になったものです。
前々回の審理で弁護側が主張したのは、次の2点でした。
1.消防本部の通信指令が電話を受けるのは、「公務」であって、法律で保護を受けるべき「業務」ではない。
2.被告人が119番通報したのは、実際に体調が悪かったからで、実際に救急隊員が駆け付けたときには、体調が治っていたので帰ってもらったものである。だから偽計を意図して119番通報したのではない。(実際の救急車の出動も何度かありました。)
※公務員の業務が、「公務」なのか「業務」なのかは過去の判例でも議論が分かれることもあるそうで、「警察のような権力的公務の場合は保護すべき業務にあたらない」とすることが最高裁判決で示されているようです。被告人は以前にも警察の通信指令に同様に偽計を用いて110番通報をして実刑判決を受けていますので、この議論をある程度分かったうえで今回も119番通報していますので、確信犯的な犯行を意図しているのでしょうか?
前々回の裁判の審理で、検察側が申請した証拠のうち「消防本部の通信指令室の職員の供述調書」について、弁護側が不同意としたため、前回の裁判の審理では「消防本部の通信司令室の職員」に対する証人訊問が行われ、合わせて被告人質問も行われました。(残念ながら傍聴できていませんが)
今回の裁判の審理では、検察側の「論告求刑」と「弁護人最終弁論」、「被告人最終陳述」が行われ、本日で結審して次回期日で判決言い渡しということになりました。
論告求刑
論 告被告人と弁護人は、119番通報したことは認めるがこの行為は偽計にあたらないと主張している。また、消防本部の通信指令が119番通報を受けることは公務であって、業務にあたらないと主張している。
しかしながら、被告人が119番に電話した架電行為は、「欺罔」「計略」「策略」「いたずら」行為であり、社会通念上受容し得る限度を超えるものであり、「偽計行為」であることは明白である。
弁護人は、被告人の行為は百歩譲っても「軽犯罪法違反」であると主張するが、消防の業務を妨害し被告人の119番通報に関わるがために、他の119番通報を受けることが出来ないなどの業務に支障があったばかりか、万一の緊急時の対応にも支障が出た可能性もあったものである。
被告人はしんどくなったから119番通報したものであると、故意を否定しているが、「無言電話」や「テレビの音量を大きくして電話する」などの非常識な行為や、入院の必要がないのに119番通報した行為もあり故意であることは明白である。
被告人は、過去に類似の行為で実刑判決を受けているのに、今回同様の行為を行っていることは悪質である。
消防本部の通信指令は、仕事であるため119番通報を受けなければならず、被告人の行為は市民の生死を保つ消防本部の使命を妨害したもので、社会的に非難されるべきものであり、被告人は規範意識が欠如していると言わざるを得ない。
求 刑
被告人に対し懲役2年を求刑する。
弁護人最終弁論
被告人が119番通報したことは認めるが、これは「偽計業務妨害」にあたらないため、被告人は無罪である。
被告人が119番通報したのは、しんどくなって救急車が必要となったからであり、偽計にあたらない。
電話しながらテレビの音量を大きくしたのは、しんどくて話が途絶えたため、消防職員にまだ電話が続いていることを気付いてもらいたかったためである。
数秒間で電話したのも、体調不良を訴えたかったためである。
いずれの行為も故意がなく、「無罪」か最悪でも「軽犯罪法違反」とすべきものである。
次に、高齢の被告人を半年以上も拘留していることは不当であり糾弾されるべきものである。
被告人最終陳述
(大きな声での怒号も含め20分間陳述しました。)
業務妨害は、一般の業務を対象としていて、公務員の仕事は業務ではなく公務である。
私は六法全書を読んで勉強してきた。公務員の仕事は公務であ。消防が119番通報を受けるのも当然の仕事であって公務である。消防本部は公務であるがために被害届を出せなかったことは、このことを証明している。(この主張を3回ほど繰り返し)
・・・裁判長がこれを制し、「次に何か主張したいことは」と問いかけしたので
私は、過去に無免許運転で刑事裁判にかけられ罰金を支払らわされた。道路交通法は刑事事件ではないのに刑事裁判を受けた。警察へ110番通報した件でも、電話を受けるのは警察の公務であるのに「偽計業務妨害」で起訴され、裁判で実刑判決を受けた。デッチ上げを受けた。(この主張を繰り返し)
・・・裁判長が、今は過去の事件ではなく今の事件を審理しているので、過去の事件のことを繰り返し主張するのであれば、発言を中止させるとして、「次になにか主張したいことは」と問いかけしました。
証人訊問で、通信指令室の職員が出てきたのはおかしい。救急車で駆け付けてくれた救急隊員を証人として呼ぶべきである。そのような主張を書いた書面を弁護士に渡したのに、弁護士が裁判所に提出していないのはおかしい。検察官も何も調べていない。
次に弁護士に向かって、怒気を荒げて「なんで自分が言ったことを主張しなかった。面会に来いといったのに来なかったのはなんでや!」と何度も怒鳴りましたので、裁判長がこれを制止しました。「大きな声を出すのはやめなさい。弁護人は弁論のなかであなたの言いたいことを主張していました。あなたがこれ以上大きな声を出すのを続けるようであれば、私の権限で発言を止めさせます。」と制止したため被告人は黙りました。
裁判長が「次に主張したいことは」と言い被告人の陳述を促しましたが、同じことを繰り返しましたので、裁判長は被告人の陳述を打ち切り、次回の「判決言い渡し」の期日調整
に入りました。
裁判の向う側
被告人は半年以上も拘留されていますが、今回の法廷でも大きな声を出して怒鳴っていました。いったい何がしたいのでしょう。相手をとっちめることを楽しみたいのでしょうか。「切れ老人」の典型のような気がします。余生をそこまで犠牲にしていることに「あわれ」を感じます。
確かに「威力業務妨害」や「偽計業務妨害」の判断の中で、「公務」か「業務」かという議論があるようですが、被告人はこの議論をわかったうえで119番通報を繰り返したと認めているのですから、偽計が故意であることは自ら認めているような気がします。
超高齢化社会に突入した中で、身近にも大なり小なりこのような高齢者が存在します。今後も益々増えてくるのでしょう。高齢者は自覚をもって他人に迷惑をかけないよう、「切れ老人」「老害」にならないようありたいものです。
次回判決も傍聴する予定ですので、裁判長がどのような判決を言い渡すのか興味があります。判決言い渡しを受けた被告人がどのような反応を示すのかも興味があります。結果は続報として投稿させていただきますので、楽しみにしていてください。
0 件のコメント:
コメントを投稿