この被告人、100日以上拘留され保釈されていません。
被告人:70代後半 男性
求 刑:次回以降へ
被告人は、平成30年2月から12月迄の間の10か月間で239回、住所地に属する消防本部の通信指令室に向けて、携帯電話を使って119番通報しました。求 刑:次回以降へ
事件の概要
その電話(手口)は下記のようなものでした。
一例:「わざと自宅のテレビを大音量にしたうえ119番通報して通信指令員に話の内容を聞き取れなくする。」この119番通報を立て続けにかける。
一例:「ワン切り電話」を立て続けにかける。
などでした。その他にも様々な手口で119番通報し、被告人からの同様の119番通報は239回になったものです。
消防本部の通信指令室では、被告人からの119番電話が続けざまに入ることによって、他の緊急通話の受け付けに支障をきたすようになったため、警察に「業務妨害」で刑事告訴し、捜査の結果被告人は「偽計業務妨害」で逮捕・起訴されたものです。
被告人は、警察・検察の取り調べに対し、「119番通報したことは認めるが、身体がしんどいから119番にかけただけ。消防は119番通報を受けるのは公務であるはずだ。消防が通報を受けるのは当然の業務で、自分は妨害などしていない。」などと供述し、無罪を主張していました。
被告人は、徳島県の中学を卒業後大阪府内を転々とし、現在は不動産業を経営しています。離婚歴があり、現在は一人で生活しています。
前科は4件あります。
最近では、無免許で車を運転し道路交通法違反で逮捕され、懲役8月・執行猶予4年有罪判決を受けましたが、平成29年2月に「偽計業務妨害」で逮捕され懲役1年の実刑判決を受けたため、道路交通法違反の執行猶予は取り消されました。
前刑の平成29年2月の「偽計業務妨害」は、今回と同様に消防の通信指令室に緊急性のない119番通報を287回に渡って行ったもので、緊急出動した救急車に対し救急搬送をこばんだり、救急車の督促や遅いと言って電話をかけたものです。
【偽計業務妨害】(刑法第233条~第234条、第234条の2)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害することを内容とする犯罪です。間接的、無形的な方法で人の業務を妨害する行為を処罰し、保護法益は業務の安全かつ円滑な遂行です。法定刑は3年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
罪状認否
被告人
電話をかけたが内容は違う。身体がしんどいからかけただけ。
で、この後被告人は、「体調不良になっても拘置所が対応してくれないし、薬を飲ませてくれないので、裁判所から指導してくれ。」と言い出し、やがて恫喝的な言葉遣いになりました。裁判長は拘置所に言うようにと弁護人の意見を求めたため、被告人はおとなしくなりました。
弁護人
無罪を主張します。
被告人の行為に故意性はなく、偽計にはあたらない。
通信指令は公務であって業務ではない。
妨害結果が生じていない。
冒頭陳述
検察官が「事件の概要」記載の内容を陳述し、証拠調べを申請しましたが、弁護人は警察が聴取した消防本部の通信指令員の供述調書について、「一部不同意」としたため、検察側は次回期日に消防本部の通信指令員を証人として申請しました。
弁護人が同意したため、次回期日に消防本部の通信指令員を証人として召喚することとして、裁判長が次回期日の調整を始めたところ、
被告人が裁判長の許可なく発言を始め
「消防が電話を受けるのは当然の仕事や。警察も検察も何を言うてるんや。こんなことでなんでいつまでも留置されるんや。」というような意味のことをまたも恫喝的な言葉遣いで叫び始めました。
裁判長は、「ヒートアップしてきましたね。これで閉廷します」と宣言し、閉廷しました。
裁判の向う側
被告人は、逮捕されてから100日以上拘留されています。被告人は不動産業を経営していますので、保釈金は捻出できるでしょう。高齢者でもあり保釈されてもよいようだと思いましたが、理由が分かりました。被告人は拘置所でも同様の態度で恫喝的な言葉を吐いているのでしょう。
被告人は何がしたいのでしょう。消防に何か恨みがあるのでしょうか。恨みがあったとしても大の大人がやることではありません。もっと他の方法があるはずです。
また権力に対する反骨心を示すのなら、これも他の方法があるでしょう。
「切れ老人の暇つぶし」に付き合わされて、消防もたまったものではないでしょう。
恐らく実刑判決でしょうが、被告人はいい年ですので、刑務所でしっかり反省して穏やかな余生を送ってほしいものです。
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