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| 資料画像（by Pixabay） |
罪 状 大麻取締法違反
被告人 ３０代後半 男性
求 刑 懲役６月 大麻１袋没収
判 決 懲役６月 執行猶予２年 大麻１袋没収 訴訟費用は被告人負担
事件の概要
平成３０年△月×日、被告人は地元の警察署に妻に付き添われて出頭し、大麻を所持・使用していたと自首しました。被告人はその場で、大麻取締法違反の容疑で現行犯逮捕されましたが、被告人の妻が身元を引き受けるということで、翌日釈放されました。
警察が被告人の住居を家宅創作した結果、クラッシャーとビニール袋に入った大麻７ｇを発見し押収しました。その際に被告人は所有する車に隠し持っていた煙管（大麻を吸引するための器具）を警察に提出しました。
被告人は携帯のアプリで大麻の密売人と接触し、大麻を自宅に郵送させました。ところがたまたま郵送された品物を受け取った妻が、その品物を不審に思い包みを開けたところ大麻であったため、被告人に問い質したうえ自首を勧めました。
被告人は妻に見つかった時点で大麻はやめないといけないと思いましたが、「妻さえ黙っていてくれれば、このままでやめることができる」とも思い自首することをためらいました。しかしこの時妻は、「しっかりと罪を償うよう」説得し、被告人は自首することにしました。
被告人はＡ県で生まれ、大学を卒業した後、とある会社に就職し、その後結婚して妻子とともに暮らしていました。
被告人は大学時代に友人に誘われて大麻を使用するようになり、最初は友人と一緒に購入していたものを、インターネットで売人を捜し、独りで購入するようになりました。その後、結婚してからはしばらくは大麻をやめていましたが、最近になり携帯のアプリで密売人と接触し大麻を自宅に郵送させ、妻に発覚したというわけです。
起訴状朗読
検察官が事件の概要に記載した事実を公訴事実として朗読しました。
罪状認否
被告人 起訴状のとおりです。
弁護人 公訴事実は争いません。
冒頭陳述
被告人 起訴状のとおりです。
弁護人 公訴事実は争いません。
冒頭陳述
察官が、事件の概要に記載した内容について陳述し、証拠請求しました。
弁護人は、検察官が申請した証拠について全て同意したため、証拠調べを行いました。
弁護人は、検察官が申請した証拠について全て同意したため、証拠調べを行いました。
弁護側立証
弁護側は、被告人が通院している、依存症治療専門外来を持つ「精神医療センター」の案内を証拠として申請しました。
「精神医療センター」では、２４回の通院での依存症治療プログラムで治療を進めています。
被告人質問
弁護側は、被告人が通院している、依存症治療専門外来を持つ「精神医療センター」の案内を証拠として申請しました。
「精神医療センター」では、２４回の通院での依存症治療プログラムで治療を進めています。
被告人質問
弁護人
今の思いは？
被告人
バカなことをしたなと反省しています。
弁護人
何故大麻を購入した？
被告人
アルコール依存症の治療の代わりに大麻を使いました。
弁護人
奥さんと結婚してからもやっていたのか？
被告人
結婚して一時やめていました。
弁護人
何故大麻か？
被告人
アルコールの代わりに大麻を使おうと考えました。
弁護人
アルコール依存症の症状は？ そして今現在の通院状況は？
被告人
酒を飲み過ぎて会社に行けなくなったり、酒を辛抱できなくなり飲む続けるなどします。
「精神医療センター」へ通院していますが、２４回のうち６回通院して、その後仕事の関係で行けていません。
弁護人
どういう状況で大麻を使った？
被告人
週末の夜に寝る前に一人で使いました。
弁護人
家のなかには奥さんがいるのでは？
被告人
ガレージとか家の外でやりました。
弁護人
大麻の購入費用はどうしていた？
被告人
給料の中から出していました。家計に入れる分以外は使ってもバレませんでした。
弁護人
奥さんに大麻が見つかった時、奥さんの様子は？
被告人
ショックを受けて泣いていました。申し訳ないことをしたと思っています。
弁護人
警察へ自首できたのは、奥さんの説得か？
被告人
妻の説得が大きいです。
弁護人
警察から釈放されてからどうした？
被告人
妻と自分の両親、妻の両親と話をしました。皆から相当厳しく言われました。
弁護人
勤めていた会社は？
被告人
依願退職しましたが、実質は解雇です。今は別の会社に勤めています。今の会社に勤めるまでは依存症の治療と求職活動をしていました。
弁護人
治療プログラムを２４回のうち６回受けたということだが、その後は？
被告人
新しい会社に入ってから忙しくて行けていません。落ち着くまでは、治療プログラムのなかのワークブックを書いていこうと思っています。
弁護人
被告人が再犯しないように、奥さんは何をしてくれる？
被告人
お金の使い道を管理してくれます。レシートや領収書を必ず妻に渡し、妻が別の物に使っていないか管理してくれます。
弁護人
二度と大麻に手を出さないと約束できるか？
被告人
約束します。
弁護人
大麻を我慢できると言える理由は？
被告人
今回も判決がどうなるのか分かりませんが、次は逮捕されると間違いなく、実刑になります。
弁護人
治療プログラム以外に再犯防止のために取り組むことは？
被告人
なるべく一人の時間を作らないようにします。
弁護人
携帯のアプリや売人のメールアドレスは？
被告人
携帯のアブリは情報が入ってこないようにしました。メールアドレスは削除しました。
検察官
今後大麻をどうやって我慢する？
被告人
大麻の代わりになるものを使います、例えばガムを噛みます。
検察官
奥さんに大麻を発見されたとき、黙っておいてほしいと言った？
被告人
バレたので咄嗟に言いました。やめないといけないとも思いました。
検察官
今回は逮捕された次の日に釈放されたが、次やった場合は間違いなく身柄を拘束されるので絶対次の無いように。
裁判長
大麻と酒でどちらを優先したのか？
被告人
酒は飲んだらあかんなという意識があって、そしたら大麻となりました。
裁判長
大麻が何故わるいのか、分かっているのか？
被告人
健康面も精神面にも良くありません。依存性もあります。
裁判長
大麻を再び使ったときに、大麻の悪さを知っていたのか？
被告人
知っていましたが、酒をやめる代わりをさがしたのが良くなかったと思います。
裁判長
大麻も酒もやめるためにどうする。
被告人
自分の趣味に時間をさきたいと思います。
裁判長
被告人もつらいが、父親であるあなたが大麻を使っていたという事実は、あなたの子供もつらいということを認識するように。
奥さんがたまたま大麻を受け取ってくれてどうだったのか。
被告人
妻が受け取ってくれて、大麻をやめるきっかけになりました。これがなかったらズルズルと使っていたと思います。
裁判長
同じ過ちを繰り返さないようにしなさい。治療プログラムの今まで６回の内容は？
被告人
自分自身の分析をしています。酒を飲むと大麻もしたくなる。大麻と酒、酒と大麻の悪循環が引き金になります。
二度と過ちは繰り返しません。
論告求刑
論 告
被告人には大麻の常習性、依存性がみられ、再犯を否定できない。秘密裏に使う可能性もある。大麻は身体や精神をむしばむだけでなく、暴力団の資金源にもなっており責任は重大である。
求 刑
懲役 ６月 大麻１袋を没収する。
弁護人最終弁論
公訴事実は争わない。
以下に情状についてのみ述べる。
・被告人は、大麻は自身の使用のみである。
・前科前歴はない。
・社会内で更生できる余地がある。
・深く反省している。
・治療プログラムに週に１回通院している。現在中断しているが、就労が安定した段階で定期的に通院す。
・妻が金銭管理を行い、助勢する。
・両親、兄も監督する。
以上から、執行猶予付きの寛大な判決をお願いする。
被告人最終陳述
多くのみなさんに迷惑をお掛けして申し訳ありません。
判 決
審理当日に判決の言い渡しが行われました。
主 文
懲役６月 執行猶予２年 大麻１袋は没収
訴訟費用は、被告人の負担とする。
量刑の理由
被告人が所持していた大麻の量は少なくなく、親和性・依存性は否定できない。
一方で被告人は自首しており、反省の態度を示している。
依存症治療プログラムにも通院して更生への意欲が見える。
よって、今回に限り執行猶予付きの判決とした。
裁判の向う側
何回か前の投稿で、２０歳代の女性が大麻を購入して使用していた事件を紹介しました。
その事件では、被告人は「売人はTwitterでさがしました。」と供述しました。
今回の事件も被告人は、大麻は携帯のアプリで購入したと言っていましたので、おそらくTwitterを使ったのではないかと思います。
大麻や覚醒剤がこんなにも簡単に手に入る世の中におどろきです。
今回の事件の被告人は、普通のサラリーマンです。
大麻や覚醒剤が、特別なことではなく、私たちの普通の生活の場に入り込んできているということを、改めて実感しました。
大麻や覚醒剤を使う人たちは、自分だけが使っているので、自分の健康には良くないけれど誰にも迷惑をかけていないと思っている人が大半だと思います。中には大麻や覚醒剤が何故悪いのか分からずに使っている人もいます。
そうではありません。大麻や覚醒剤はその依存性や常習性から、自身だけでなく、時には他人の物に手をつけたり、他人を傷つけるという他の犯罪に発展するという危険性をはらんでいます。
また、大麻や覚醒剤は暴力団などの反社会的組織の資金源になっていることは明らかです。私が以前に別の法廷で傍聴した裁判では、暴力団の配下がテナントビルの１フロアーを借りて、大掛かりな大麻草の栽培設備を作って大麻草を栽培したり、１戸建て住宅を借りて同様に大麻草を栽培していました。暴力団は大麻を大きな資金源としています。これらの資金は、また別の犯罪の資金として使われます。
大麻や覚醒剤は自分だけの問題でなく、社会に大きな迷惑をかけて、他の犯罪の手助けもしているということをしっかりと理解してほしいと思います。
今回の事件では、被告人の奥さんのしっかりとした説得で被告人は自首して大麻をやめるというきっかけになりました。ファインセーブです。
被告人は、しっかりと反省をして奥さんや子供のためにも、まっとうな人生を歩んでほしいと思いました。
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