被告人は帰宅途中の被害者の後をつけ、タイミングをはかりながら後ろから近づき、被害者の両足が横に平行するところで、被害者の履いているパンプスのつま先を両足とも後ろから押さえたうえで後方から押し倒しました。
被告人の目的は被害者の履いているパンプスを奪うことのみでしたので、被害者に抵抗されながらも、パンプスを両足とも脱がして奪い逃走しました。
被告人の目的は被害者の履いているパンプスを奪うことのみでしたので、被害者に抵抗されながらも、パンプスを両足とも脱がして奪い逃走しました。
資料画像(by Pixabay) |
罪 状 強盗致傷 (裁判員裁判)
被告人 40代前半 男性
判 決 懲役3年(未決勾留日数75日を算入する)
執行猶予5年、執行猶予期間中は保護観察処分とする。
被害者は20代前半の女性でした。
平成30年3月の初めのことです。
被害者は帰宅途中に自宅の最寄駅を降りて、いつもどおりに人通りの少ない道路を経由して事件現場となる公園に差し掛かり、公園の中の階段状の遊歩道を降りていきました。被告人は被害者が公園に入る前から被害者の足元のパンプスに目をつけていましたので、遊歩道脇の植え込みの中から被害者の後をつけました。
被告人は、タイミングをはかりながら後ろから近づき、被害者の両足が横に平行するところで、被害者の履いているパンプスのつま先を両足とも後ろから押さえたうえで後方から押し倒しました。被害者は歩いている途中で急に足元を押さえられ、しかも押し倒されたので、そのままの恰好で前向けに転倒しました。
被告人の目的は被害者の履いているパンプスを奪うことのみでしたので、被害者に抵抗されながらも、パンプスを両足とも脱がして奪い逃走しました。
被害者は警察に通報し、警察が防犯カメラの映像等から被告人を割り出し、被告人を逮捕しました。
被告人は1~2年前から、拾ってきた女性物のパンプスの臭いを嗅いで自慰行為を行いました。パンツ、ブラジャーについては15年前から臭いを嗅いて自慰行為を行いましたが、最近はバンプスのみになってきたとのことです。自宅の部屋には5~6足の使用済のエナメルハイヒールがありました。
平成30年1~2月ころから黒いパンプスを探していたところ、平成30年3月事件当日に黒いパンプスを履いた被害者を発見し、後ろからつけてパンプスをつかんで盗ろうと思い、上記犯行に及んだということです。被害者がケガをするとは思わなかったとも述べています。また、被害者から奪ったパンプスで自宅で1~2回自慰行為を行ったと供述しています。
証人尋問
(弁護側情状証人 同居する被告人の実母)
弁護人
本件を最初に聞いてどう感じましたか。
証 人
大変驚きました。
弁護人
事件の内容を聞いてどう思いましたか。
証 人
最低だと思います。
弁護人
被害者が示談に応じていただいたことにどう思いますか。
証 人
示談に応じていただき、感謝しています。
示談金の30万円は被告人の弟が出しました。
弁護人
被告人のこれまでと現状について教えてください。
証 人
三人兄弟の長男で年の離れた弟と妹がいます。
弁護人
被告人は高校を卒業後、九州の大学に入学しまたが学費の仕送りが途絶えたため、退学していますね。退学後、九州の建設会社に勤め、大学からの彼女と結婚の約束をしましたが、その後実家では父親のDVが始まり、これから弟や妹を守ってほしいということと、地元で働いて家計を支えてほしいと願い、被告人は地元へ帰ってきていますね。その後あなたは父親と離婚しましたね。
被告人は地元へ帰ってきましたが、婚約者は遠方へ行くことはできないと結婚は破談になりましたね。
被告人は地元に帰って働き始め、あなたも働いていましたが、あなたは給料を全てパチンコにつぎ込み、生活は被告人の給料で支えていましたね。
大学の学費の仕送りが途絶えたのも、あなたがパチンコにお金をつぎ込んでいたからでしたね。
今年に入ってあなたの元夫が居座って同居していますね。
被告人は大学をやめ、彼女とも別れ、実家に帰り家族の生活費を稼ぐために働くだけの生活で、ストレスのはけ口がなかったのではないですか。
やり場のないストレスが、バンプスの臭いで自慰行為という特殊な性癖に向いたのではないですか。
あなたの行いが今回の犯行のひとつの原因ではないですか。
証 人
そのとおりだと思います。
弁護人
被告人が再び事件を起こさないためにどうしますか。
証 人
弁護人から紹介された、性障害治療センターで治療を受けさせます。一緒に生活して、しっかり話しを聞いてやります。元夫とは別居して、親子2人でのんびり暮らしていきます。
検察官
被告人の仕事の態度はどうでしたか。
証 人
仕事は毎日朝7時に出て夜7時に帰っており、真面目に働いていました。社長も真面目だと言ってくれています。
検察官
あなたは夜5時から仕事に出ていますが、被告人と同居してどのように監護しますか。
証 人
被告人の部屋に鍵がありましたが、取り外して明るく開放します。そして、いつでも話ができるような環境にします。
検察官
犯行時も被告人の給料で生活費しており、あなたの年金は全てパチンコに使っていましたが、性障害治療センターの治療費は誰が出しますか。
証 人
被告人の弟が出すと言ってくれています。
検察官
元夫はいつ出ていくことになっていますか。
証 人
まだ話はできていません。
検察官
元夫が出ていくことに応じない場合は、また同居しますね。
証 人
その時は公的施設を探したうえで、追い出します。
被告人質問
弁護人
被害者に対してどういう気持ちですか。
被告人
被害者の方には大変申し訳なく思っています。バカなことをしたと思います。
弁護人
あなたは初めて性交をしたのはいつですか。
被告人
高校3年生の時です。その方とは大学が九州で遠距離になり別れました。
弁護人
その後のあなたの性癖はどうだったのですか。
被告人
九州で学生時代にも交際しましたが普通でした。
弁護人
その後の状況を教えてください。
被告人
大学2回生の時に実家からの仕送りがとどこおり始めました。3回生で仕送りが停止したので退学し、九州の建設会社に就職しました。退学の3か月前に十二指腸潰瘍で倒れました。
大学時代に交際した彼女とは婚約し、両家の顔合わせもしました。
母親の願いで滋賀に帰ることになり、婚約は破談しました。
22才の時、地元に帰りましたが、弟が11才、妹が8才でしたので私が最初はバイトから働き始めました。
母はこの頃からパチンコに染まり、帰宅は毎日夜の11時頃でした。母はもらう給料を全てパチンコに使いましたので、家賃滞納もありました。
妹が高校を卒業するまで、私が面倒をみました。
その頃から、ストレスから自分の部屋で女性の下着で自慰行為をしました。
パンプスの臭いからの行為は2年前からです。
検察官
今まで勤めていた会社は解雇されていますが、復帰後はどうしますか。
被告人
今まで身に付けた配管工の技術がありますので、仕事はできます。また、勤めていた会社の社長も復帰してもよいと言ってくれています。
判 決
主 文
懲役3年、未決勾留期間75日を算入する。執行猶予5年とし、この期間は保護観察処分とする。
理 由
弁護人の「強盗の犯意はなかったため窃盗傷害」とする主張はあたらない。被告人は被害者を背後から押し倒しており、状況によっては重大な結果を招いた可能性もある。
被告人は強取の意志をもって犯行におよんでおり、執着心に裏付けられた犯行である。
しかしながら、特に悪質な部類にあたらない。
また、弁護側の主張する監護の体制は脆弱と言わざるを得ない。よって、執行猶予期間中は保護観察処分とする。
裁判の向う側
犯行は帰宅途中に一人で歩く女性を背後から襲うという、卑劣なものであり、被害者は身体の傷だけでなく、心の傷も大きいと思います。
判決はこの点をしっかりと断罪していました。
また、社会で更生するための監護の体制も、母親の証言を聞く限り脆弱と言わざるを得ないと思いました。
犯行の動機となった被告人の性癖が、被告人のこれまでの鬱屈した人生が少なからず影響を与えたということは、証人尋問、被告人質問により分かります。弁護人が弾劾したように母親の身勝手な生きざまに翻弄された人生というのも、ある程度は理解できます。
最後にはDVで別れたはずの元夫と同居するなど、被告人にとっては考えられない仕打ち
を母親から受けています。
しかし、被告人がこの鬱屈した人生を変える機会はあったと思います。相談する人もいたことと思います。母親と真剣に向き合って話をする機会もあったと思います。
執行猶予期間中の保護観察処分という厳しい判決でしたが、保護観察を受けるなかで、
しっかりと治療を受けて、社会のなかで更生して、次の人生を歩んでほしいと思います。
被告人は、タイミングをはかりながら後ろから近づき、被害者の両足が横に平行するところで、被害者の履いているパンプスのつま先を両足とも後ろから押さえたうえで後方から押し倒しました。被害者は歩いている途中で急に足元を押さえられ、しかも押し倒されたので、そのままの恰好で前向けに転倒しました。
被告人の目的は被害者の履いているパンプスを奪うことのみでしたので、被害者に抵抗されながらも、パンプスを両足とも脱がして奪い逃走しました。
被害者は警察に通報し、警察が防犯カメラの映像等から被告人を割り出し、被告人を逮捕しました。
被告人は1~2年前から、拾ってきた女性物のパンプスの臭いを嗅いで自慰行為を行いました。パンツ、ブラジャーについては15年前から臭いを嗅いて自慰行為を行いましたが、最近はバンプスのみになってきたとのことです。自宅の部屋には5~6足の使用済のエナメルハイヒールがありました。
平成30年1~2月ころから黒いパンプスを探していたところ、平成30年3月事件当日に黒いパンプスを履いた被害者を発見し、後ろからつけてパンプスをつかんで盗ろうと思い、上記犯行に及んだということです。被害者がケガをするとは思わなかったとも述べています。また、被害者から奪ったパンプスで自宅で1~2回自慰行為を行ったと供述しています。
証人尋問
(弁護側情状証人 同居する被告人の実母)
弁護人
本件を最初に聞いてどう感じましたか。
証 人
大変驚きました。
弁護人
事件の内容を聞いてどう思いましたか。
証 人
最低だと思います。
弁護人
被害者が示談に応じていただいたことにどう思いますか。
証 人
示談に応じていただき、感謝しています。
示談金の30万円は被告人の弟が出しました。
弁護人
被告人のこれまでと現状について教えてください。
証 人
三人兄弟の長男で年の離れた弟と妹がいます。
弁護人
被告人は高校を卒業後、九州の大学に入学しまたが学費の仕送りが途絶えたため、退学していますね。退学後、九州の建設会社に勤め、大学からの彼女と結婚の約束をしましたが、その後実家では父親のDVが始まり、これから弟や妹を守ってほしいということと、地元で働いて家計を支えてほしいと願い、被告人は地元へ帰ってきていますね。その後あなたは父親と離婚しましたね。
被告人は地元へ帰ってきましたが、婚約者は遠方へ行くことはできないと結婚は破談になりましたね。
被告人は地元に帰って働き始め、あなたも働いていましたが、あなたは給料を全てパチンコにつぎ込み、生活は被告人の給料で支えていましたね。
大学の学費の仕送りが途絶えたのも、あなたがパチンコにお金をつぎ込んでいたからでしたね。
今年に入ってあなたの元夫が居座って同居していますね。
被告人は大学をやめ、彼女とも別れ、実家に帰り家族の生活費を稼ぐために働くだけの生活で、ストレスのはけ口がなかったのではないですか。
やり場のないストレスが、バンプスの臭いで自慰行為という特殊な性癖に向いたのではないですか。
あなたの行いが今回の犯行のひとつの原因ではないですか。
証 人
そのとおりだと思います。
弁護人
被告人が再び事件を起こさないためにどうしますか。
証 人
弁護人から紹介された、性障害治療センターで治療を受けさせます。一緒に生活して、しっかり話しを聞いてやります。元夫とは別居して、親子2人でのんびり暮らしていきます。
検察官
被告人の仕事の態度はどうでしたか。
証 人
仕事は毎日朝7時に出て夜7時に帰っており、真面目に働いていました。社長も真面目だと言ってくれています。
検察官
あなたは夜5時から仕事に出ていますが、被告人と同居してどのように監護しますか。
証 人
被告人の部屋に鍵がありましたが、取り外して明るく開放します。そして、いつでも話ができるような環境にします。
検察官
犯行時も被告人の給料で生活費しており、あなたの年金は全てパチンコに使っていましたが、性障害治療センターの治療費は誰が出しますか。
証 人
被告人の弟が出すと言ってくれています。
検察官
元夫はいつ出ていくことになっていますか。
証 人
まだ話はできていません。
検察官
元夫が出ていくことに応じない場合は、また同居しますね。
証 人
その時は公的施設を探したうえで、追い出します。
被告人質問
弁護人
被害者に対してどういう気持ちですか。
被告人
被害者の方には大変申し訳なく思っています。バカなことをしたと思います。
弁護人
あなたは初めて性交をしたのはいつですか。
被告人
高校3年生の時です。その方とは大学が九州で遠距離になり別れました。
弁護人
その後のあなたの性癖はどうだったのですか。
被告人
九州で学生時代にも交際しましたが普通でした。
弁護人
その後の状況を教えてください。
被告人
大学2回生の時に実家からの仕送りがとどこおり始めました。3回生で仕送りが停止したので退学し、九州の建設会社に就職しました。退学の3か月前に十二指腸潰瘍で倒れました。
大学時代に交際した彼女とは婚約し、両家の顔合わせもしました。
母親の願いで滋賀に帰ることになり、婚約は破談しました。
22才の時、地元に帰りましたが、弟が11才、妹が8才でしたので私が最初はバイトから働き始めました。
母はこの頃からパチンコに染まり、帰宅は毎日夜の11時頃でした。母はもらう給料を全てパチンコに使いましたので、家賃滞納もありました。
妹が高校を卒業するまで、私が面倒をみました。
その頃から、ストレスから自分の部屋で女性の下着で自慰行為をしました。
パンプスの臭いからの行為は2年前からです。
検察官
今まで勤めていた会社は解雇されていますが、復帰後はどうしますか。
被告人
今まで身に付けた配管工の技術がありますので、仕事はできます。また、勤めていた会社の社長も復帰してもよいと言ってくれています。
判 決
主 文
懲役3年、未決勾留期間75日を算入する。執行猶予5年とし、この期間は保護観察処分とする。
理 由
弁護人の「強盗の犯意はなかったため窃盗傷害」とする主張はあたらない。被告人は被害者を背後から押し倒しており、状況によっては重大な結果を招いた可能性もある。
被告人は強取の意志をもって犯行におよんでおり、執着心に裏付けられた犯行である。
しかしながら、特に悪質な部類にあたらない。
また、弁護側の主張する監護の体制は脆弱と言わざるを得ない。よって、執行猶予期間中は保護観察処分とする。
裁判の向う側
犯行は帰宅途中に一人で歩く女性を背後から襲うという、卑劣なものであり、被害者は身体の傷だけでなく、心の傷も大きいと思います。
判決はこの点をしっかりと断罪していました。
また、社会で更生するための監護の体制も、母親の証言を聞く限り脆弱と言わざるを得ないと思いました。
犯行の動機となった被告人の性癖が、被告人のこれまでの鬱屈した人生が少なからず影響を与えたということは、証人尋問、被告人質問により分かります。弁護人が弾劾したように母親の身勝手な生きざまに翻弄された人生というのも、ある程度は理解できます。
最後にはDVで別れたはずの元夫と同居するなど、被告人にとっては考えられない仕打ち
を母親から受けています。
しかし、被告人がこの鬱屈した人生を変える機会はあったと思います。相談する人もいたことと思います。母親と真剣に向き合って話をする機会もあったと思います。
執行猶予期間中の保護観察処分という厳しい判決でしたが、保護観察を受けるなかで、
しっかりと治療を受けて、社会のなかで更生して、次の人生を歩んでほしいと思います。
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