2019年5月22日水曜日

裁判傍聴のすすめ その3「裁判ミニ知識」「裁判所あるある」

前回は「裁判傍聴のすすめ  その2「用語解説」「裁判所あるある」をご紹介させていただきました。

今回も、前回に引き続き刑事裁判をメインに「裁判ミニ知識」や、「裁判所あるある」をお話させていただきます。


裁判ミニ知識

裁判官になるには

裁判官になるには、検察官や弁護士と同じく司法試験に合格しなければなりません。司法試験を受験するための資格を得るには二つの方法があります。一つは法科大学院(法曹専門職大学院、修業年限3年)に合格し、そこで2年(既修)ないし、3年む(未修)の勉強を経て修了すること。もう一つは予備試験と呼ばれる試験に合格することです。これら三つの方法のいずれかで司法試験受験資格を得てから司法試験に合格することが、裁判官になるための第一歩です。

司法試験の合格者は、最高裁判所に司法修習生として採用され、国家公務員に準じた身分で司法修習を行います。司法修習生は守秘義務と修習専念義務を負い、副業やアルバイトは許されません。司法修習生は以前は国家公務員と同じく国から給与を支給されていましたが、2011年11月以降の入所者から給費制が廃止され、貸与制に移行しました。司法修習生の修習資金は国から月額23万円を貸与され、修習後5年間据え置きで、10年以内で返済することとなっています。

司法修習の修習期間は1年と定められ、カリキュラムは10ケ月の実務修習と、司法研修所における2か月の集合修習に分かれます。実務修習では、全国の地方裁判所本庁所在地に配属され、刑事裁判・民事裁判・弁護・検察・選択修習を2ケ月ずつ修習します。選択修習では、各人の関心に従い、専門性を深めます。

司法修習終了後は、最後に国家試験である「司法修習生考試」を受験します。司法修習生考試は司法研修所からは独立した司法修習生考試委員会によって、筆記試練の形式で出題されます。科目は刑事裁判・民事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目で、1日1科目で行われます。
この「司法修習生考試」に合格した者は司法修習終了となり、判事補・2級検事任用資格
及び弁護士登録資格を得ます。不合格の場合は法曹資格は得られません。

裁判官になる者は真面目で優秀な人材が任官されるケースが多いようです。

判事補は、晴れて裁判所に任官されると「未特例判事補」という身分になります。未特例判事補は見習いということで、単独審を行うこともできず、まして裁判長にはなれません。

5年の経験を積むと最高裁判所の指名した者は、判事と同等の権限を有する「特例判事補」になれます。「特例判事補」は単独審を担当することができ、合議体に2人同時に加わることができ、裁判長にもなれます。

一般的に10年の経験を積むと、最高裁判所が「判事」となるべき者を指名し、その指名に基づいて内閣が任命することによって、「判事」となる者が決定されます。

裁判官になるのは、大変難しく、お金も時間もかかるということです。


裁判所あるある

検察官の貧乏ゆすり

ある時、裁判を傍聴していると「ガタガタガタガタ」という低い音が聞こえてきました。思わず地震かと思い、逃げる態勢になりましたが、あれおかしいぞ、揺れがないと思って左前方を見ると、苦虫をつぶしたような顔をした中年の検察官が「貧乏ゆすり」をしていました。「貧乏ゆすり」は相当長く続きました。私も以前はよく「貧乏ゆすり」をしていたので分かります。検察官はきっと「いらち」で「気が短い」のでしょう。
注:いらちとは関西弁で、すぐいらいらする性格の人のことです。

検察官のペンの音

裁判が開廷して、弁護人が証人尋問を始めました。しばらくすると「カリカリカリカリ」という音が聞こえてきます。証人の言っていることが良く聞こえないな、うるさいな、と思っていると、裁判長から、「検察官、ペンの音で証人の声が聞こえない。静かにしなさい。」という検察官に対する法廷指揮が入りました。当日は裁判員裁判で、検察官は2名法廷に入っており、そのうちの1名が新人だったのでしょうか。張り切って必死で記録をとっていたのです。検察官のペンの音がなくなると、ちゃーんと証人の声が聞こえました。

検察官の法廷戦術?



当日の法廷は、裁判長は40代の男性、検察官は50代とおぼしき女性、弁護人は30代の男性でした。
裁判長が開廷を宣言し、弁護人が証拠申請をしました。精神疾患の専門家で被告人の主治医でもある医師と、被告人のご主人の2名です。裁判長が検察官に意見を尋ねました。検察官は証人尋問は2名とも不同意との意見でした。裁判長は弁護人が申請した2名とも証人として採用することを決定しました。検察官はムッとした顔になりました。
証人尋問の1人目は精神疾患の専門家で被告人の主治医でもある医師です。弁護人が尋問し、次に検察官が尋問しました。検察官は医師に対して、専門的な意見を聞くというよりも、むしろ被告人に対する専門的所見に不備があるかのような尋問をおこなっていました。
証人尋問の2人目は、被告人のご主人です。弁護人が尋問を始めると、「ガサゴソガソゴソ」と何やら書類をまさぐる音が大きくて、証人の証言が聞こえません。そうです弁護人が尋問をしている間、検察官が自分の前の机の上の書類を、要があるのかないのか分かりませんが、あからさまな様子でまさぐり、大きな音を立てていました。

法廷ミステリー作家として有名な和久俊三の作品に登場する、猪狩文助という弁護士は「法廷荒らし」の異名があり、検察官が証人尋問や被告人質問を始めると大きな音をたてたりして、検察官の尋問や質問を妨害するという法廷戦術をとっていました。

私は傍聴席で「法廷荒らしの猪狩文助」があらわれた、と思いました。「わざと」かどうかは分かりませんが、検察官の法廷戦術?だったのでしょうか。


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