【裁判傍聴記】彼女がいるのに何故こんなことするの

被告人は自身が居住するマンションの、１階に住む２０代の女性の部屋のベランダに干してあった下着を、窃取しました。

被告人は自身が働くスポーツクラブで、１０代の女性の下着を盗撮しました。
被告人には付き合っている彼女がいました。

罪　状　窃盗、迷惑防止条例違反
被告人　20代後半　男性

求　刑　懲役１年　

　事件の概要　

平成２９年◇月×日、被告人は自身が居住するマンションの、１階に住む２０代の女性の部屋のベランダに干してあった下着を、窃取しました。

平成２９年〇月△日、被告人は自身が働くスポーツクラブで、１０代の女性の下着を盗撮しました。

平成３０年△月に発生した１０代女子への声かけ事件に対する被告人の取り調べの際、被告人が持っていたスマートフォンのメモリに、上記の２件の画像データが保存されていたため、上記２件の事件についても、被告人の犯行が発覚しました。

被告人は、大学を卒業後、学生時代からアルバイトでインストラクターをしていたスポーツクラブに就職しました。第２の事件の１０代の女性被害者は、被告人がスポーツクラブで教えていた生徒でした。

被告人は４年前、大学生の頃から駅で盗撮を繰り返していましたが、前科・前歴はありませんでした。


　弁護側証人尋問　

被告人の母親が情状使用人として、出廷しました。

弁護人
あなたは、本件を聞いた時どのように思いましたか。
証　人
びっくりして、現実のこととしては受け入れられませんでした。

弁護人
あなたは被告人と、同居しているのですね。
証　人
主人とは離婚して、被告人と2人で暮しています。

弁護人
被告人は大学生の頃から駅で盗撮を繰り返していたようですが、被告人の性癖について知っていましたか。
証　人
全く知りませんでした。

証人はこのあたりから、涙ながらの証言でした。

弁護人
あなたは普段、被告人とどのように接していましたか。
証　人
私が夜勤なので、普段接することはほとんどありませんでした。

弁護人
被告人が社会復帰したら、被告人が再犯しないよう、あなたはどのようにしますか。
証　人
仕事を夜勤の仕事から昼間の仕事に変えて、被告人と話をする機会を作ります。その中で悩んでいることがないかなどしっかり話を聞いてやります。


　被告人質問　

弁護人
被害者に対してどのような気持ちですか。
被告人
大変申し訳ない気持ちです。

弁護人
今日法廷で証言してくれているお母さんに対して、どういう気持ちですか。
被告人
大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。

弁護人
被害者と被害弁済の話はしていますか。
被告人
弁護士の先生と一緒に話を進めています。

弁護人
具体的にどのように話をしていますか。
被告人
第1の事件の被害者とは、５０,０００円で示談が成立していて、もう一つの条件として、マンションを出ていくよう要求されています。
第2の事件の被害者とは、被害者のお父さんを交えて示談を進めていますが、先方からは示談金として、１０万円×２４ケ月で２４０万円を提示されて、まだ解決していません。またもう一つの条件として、スポーツクラブで被害者と顔を合わせることがないようにすることを要求されています。

弁護人
社会復帰したらどのようにしますか。
被告人
母親としっかりコミニュケーションをとって、悩んでいることがあれば包み隠さず話をして解決して、二度と犯罪を犯さないようにします。

弁護人
仕事はどうしますか。
被告人
学生時代からお世話になっている今のスポーツクラブの支配人が、働かせてやるから、逃げずに働きながら罪の償いをしろと言ってもらっています。


検察官
あなた、彼女がいますよね。
被告人
います。

検察官
彼女は今回のことを知ってどういう反応ですか。
被告人
びっくりしていましたが、支えてくれると言ってくれています。

検察官
彼女がいるのに何故こんなことするの。

　論告求刑　

求刑　懲役１年

　弁護人最終弁論　

執行猶予付きの判決をお願いします。

　裁判の向う側　

被告人が何故犯行を繰り返したのでしょう。

起訴こそされていないものの、学生時代に駅で盗撮を繰り返したり、卑劣ではあるものの、下着どろぼうなど稚拙な犯行を犯しています。

母親とのコミニュケーションの不足だったのか、あるいはスポーツクラブで若い女性を見て、劣情を押さえられなかったのか、理由はどうであれ、大人であれば抑止力が働くはずです。

見るからに健康そうな身体を持った、いかにも清潔そうな若者でしたが、精神的には未発達だったのかも知れません。

テレビのニュースでは、連日のように公務員や警察官の盗撮事件が報じられます。これらの事件の容疑者も精神的には未発達なのかも知れません。どうして精神的な抑止力が働かないのか。残念です。

被告人には、今後は彼女ともしっかりと話をし、今回の事件にしっかりと向き合って、反省して二度と犯罪を犯さないようにしてもらいたいと思います。