被告人は、犯行当時乳児の長男に対し、4度に亘って暴行を加えて傷を負わせました。暴行の度合いは、数を重ねるにつれて激しくなっていき、4度目の暴行では全治41日の大腿骨骨折の重傷でした。被告人は、犯行の理由を妻を長男にとられたと感じたストレスと、仕事のストレスからだったと主張しましたが、あまりにも子供じみた身勝手な主張でした。
事件の概要
被告人は、長男(犯行当時乳児)に対し、以下の4件の暴行を加え傷を負わせました。
1回目
平成29年〇月×日、長男(当時乳児)の口の付近を引っ張って、全治1週間から10日間の傷を負わせました。
2回目
平成29年〇月△日、長男(当時乳児)の身体に噛みつき、全治13日間の傷を負わせました。
3回目
平成29年〇月〇日、長男(当時乳児)の体に熱湯の入ったケトルを押し付け、全治17日間の火傷を負わせました。
4回目
平成29年◇月▽日、長男(当時乳児)の両足を掴んで、頭に向かって折り曲げて、全治41日の大腿骨骨折を負わせました。
被告人に、前科・前歴はありません。
判 決
主 文
懲役3年 執行猶予5年
理 由
犯行の事実は起訴状記載の事実を認定した。
被告人は抵抗できない月齢の長男に対して、執拗な暴行を4回に亘って加えており、卑劣な犯行で悪質である。
被害者の被害程度も大腿骨骨折や火傷など重大である。
被告人は、妻を長男にとられたと感じたストレスと、仕事のストレスを犯行の理由であると情状を主張するが、これらは酌量に値しない。
しかし、被告人の妻が第2子の誕生を控えて、被告人との生活の再構築を希望している。また被告人の両親が被告人の行動を常に監護して、再犯の防止を証言席で約している。これらについては、量刑上看過せざるを得ないものとして、今回に限り執行猶予を付した。
裁判長は、判決言い渡しの後被告人に対し、次のように諭した。
今回量刑を検討する際、実刑とすべきところであるが、実刑が相当か迷ったが、今回に限り執行猶予を付与して、社会のなかで更生させることとした。この結果については、被告人の努力は何もない。全て妻や両親らのあなたの廻りの人たちの努力によるものである。
被告人は、このことをしっかりと認識して、更生の道を歩み、二度と同じ過ちを犯さないようにしなさい。
裁判の向う側
本件は最近よく耳にする、我が子への虐待事件でした。今回の事件は特に抵抗するすべのない乳児への卑劣な虐待事件で、許すことのできないものです。
今回の事件では恐らく、父親が保釈金を払って保釈されたのでしょう。法廷に入ってくる際も、父親と思われる人物に付き添われていました。また長男に妻をとられるストレスが犯行の原因と陳述するなど、精 神年齢が低く社会的に適応できないままに結婚して、子供をもうけたと考えられます。
結婚して子供をもうけるということは、責任と義務を伴うということを覚悟のないままに結婚している、あるいは結婚を恋愛ごっこの延長ととらえているのではないか、とも考えてしまいます。
新聞やテレビで報道される、乳児や幼児の虐待事件を見ていても、被告人の精神年齢の低さが遠因と思われる事件が多く見受けられます。他の裁判所で傍聴した児童虐待事件も被告人に対しては同様に感じました。
学校教育で解決できるものではないのかも知れませんが、行政や教育機関で何らかの対応を期待します。
妻の対応も気になります。何故4回も暴行を続けさせたのか。母親が一番気がつく位置にいながら、何故両親に相談するとか、児童相談所に相談するとか、何らかの対応がとれなかったのでしょうか。残念です。
被告人が再犯しないことを祈ります。
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