平成29年〇月頃、被告人は大津市内の閑静な住宅街の中にある野球グラウンドやテニスコートが設置された公園の駐車場に作業車を止め、注射器で覚醒剤を体内に注入して使用しました。使用後の注射器は同公園の植え込み内に捨てました。
被告人 50代前半 男性
求 刑 懲役3年
事件の概要
平成29年〇月頃、被告人は大津市内の閑静な住宅街の中にある野球グラウンドやテニスコートが設置された公園の駐車場に作業車を止め、注射器で覚醒剤を体内に注入して使用しました。使用後の注射器は同公園の植え込み内に捨てました。
その後平成29年〇月、公園近くの住民が同公園の植え込み内で注射器を発見し、警察署に届け出ました。警察署では注射器から覚醒剤反応が出たため、覚醒剤に使用されたものとして、注射器に付着していた組織をDNA鑑定しました。その結果を前科リストに照会をかけたところ、前科のある被告人が割り出され逮捕にいたったものです。なお、発見された注射器は平成26年以降に製造されたものでした。
被告人は中学卒業後、地元の電気工事の会社で働き、途中暴力団に所属したこともありましたが、現在は電気工事の会社を経営し、従業員も抱えるほどになっています。
離婚歴があり子供もいます。
被告人は10代より覚醒剤を使用しており、前科が5件あり、うち3件は覚醒剤取締法違反です。最近では平成22年に懲役2年の実刑判決を受け、平成23年に仮釈放されています。
本件の覚醒剤使用の動機は、「仕事がうまくいかずムシャクシャしてやった」と供述しています。
証人尋問
(弁護側情状証人 被告人の内縁の妻)
弁護人
あなたは被告人とどういう関係ですか。
証 人
内縁の妻です。
弁護人
いつからその関係ですか。
証 人
5年前からです。
弁護人
あなたは被告人が覚醒剤を所持あるいは使用したことを知っていましたか。
証 人
知りませんでした。
弁護人
被告人が社会復帰した際には、あなたは被告人が更生できるよう監護できますか。
証 人
行動を見て注意していきたいと思っています。
弁護人
あなたは、被告人と今後も交際するつもりですか。
証 人
本人の行動を見たうえで考えたいと思っています。
検察官
あなたは被告人と同居していますか。
証 人
同居はしていません。お互い近くに住んでいますので、お互いの家を行き来しています。
検察官
そのような関係のなかで、被告人は覚醒剤を使用しましたが、被告人が社会復帰してあなたはどのように更生に向けた監護をできますか。
証 人
今まで以上に行動を見て注意したいと思います。
検察官
あなたには家族がおられますか。おられた場合、被告人に対して理解をしてもらえますか。
証 人
娘と一緒に住んでいますが、娘は被告人の今回の件を怒っています。
検察官
あなたは、被告人と今後どのようにしたいと考えていますか。
証 人
最終的には同居して生活したいと考えています。
被告人質問
弁護人
平成23年の仮釈放後、今回の件は何回目ですか。
被告人
初めてです。今回こそ更生しようと思っていました。
弁護人
内縁の妻が証人として証言してくれましたが、それを見てあなたはどう思いましたか。
被告人
内縁の妻としっかりしたした生活をしたかった。申し訳ない。自分が逃げてしまった。後悔の思いでいっぱいです。
弁護人
覚醒剤を使用した際の状況はどのような状況でしたか。
被告人
覚醒剤の影響かと思いますが覚えていません。
弁護人
何故覚醒剤を使いましたか。
被告人
仕事で悩んでおり、ムシャクシャしていてつい使ってしまいました。
弁護人
社会復帰したら、薬物を断ち切るためにどのようにしますか。
被告人
医療機関を受診した後に、薬物依存を断ち切るために自助団体の「ダルク」にお世話になろうと思っています。
弁護人
現在あなたの会社の仕事はどうなっていますか。
被告人
今いる従業員で元請けからの仕事をこなしています。
弁護人
あなたがこのような状況では元請け会社も仕事をきるのではないですか。
被告人
元請けの社長は継続して仕事を出してくれると言っている。
弁護人
あなたの会社は借金がありますか。
被告人
金融機関から融資を受けています。
弁護人
あなたが服役することになれば、どうなりますか。
被告人
金融機関から融資を引き上げられことになり、事業継続できません。従業員も生活できなくなります。
検察官
あなたが覚醒剤を注射した注射器は犯行当時どこにありましたか。
被告人
車のダッシュボードの奥にありました。
検察官
注射器は平成26年以降に製造されたものですが、何故あなたの車にあったのですか。あなたが仮釈放されたのは平成23年です。前回以降初めて使用したというのは間違いないですか。
被告人
何故あったのか分かりません。
論告・求刑
検察官
再犯を繰り返しており、常習性が高い。
求刑 懲役3年
弁護側最終弁論
弁護人
被告人は更生の意志を示しており、出所後は「ダルク」で薬物依存を断ち切るという強い意識を示している。内縁の妻も監護を約束している。
社会のなかで更生を期すことが最良と考えるため、執行猶予付きの判決をお願いします。
裁判の向う側
つい先日、女優の三田佳子さんの次男が4度目の覚醒剤使用で逮捕され、横浜地裁は執行猶予と保護観察付の判決を言い渡しました。実刑にならなかったことに対して世間では軽い処罰ではないかという意見も出ています。
今回の事件も同様に覚醒剤使用は4度目となり、前回は実刑判決で服役していました。判決がどうなるか分かりませんが、いずれにせよ覚醒剤はこれっきりで断ち切ってほしいものです。支えてくれている内縁の妻や、自らの会社の従業員のためにも、これを最後にしてほしいと思います。
薬物依存事犯は再犯性が高いということはよく言われますが、他人に直接的な迷惑を掛けていないという意識も根底にあるのではないかとも思います。刑務所内でも薬物依存の更生プログラムがあるとのことですが、これが完全に機能していないのではとも考えてしまいます。
「ダルク」や「NA」は薬物依存に対する民間のリハビリ施設で、薬物依存症の者同士が一緒に生活しながらミーテングや薬物を使わない生活をすることで、薬物を断ち切ろうとする自助団体です。
同種事件の裁判を傍聴していると例えば大阪の西成ではお金さえあれば簡単に薬物が入手できる状況にあるそうです。薬物の資金が暴力団に流れているとも聞きます。
政府としては、民間の互助団体に頼るだけでなく、公の薬物依存根絶施設も考えてはいかがでしょう。
平成29年〇月頃、被告人は大津市内の閑静な住宅街の中にある野球グラウンドやテニスコートが設置された公園の駐車場に作業車を止め、注射器で覚醒剤を体内に注入して使用しました。使用後の注射器は同公園の植え込み内に捨てました。
その後平成29年〇月、公園近くの住民が同公園の植え込み内で注射器を発見し、警察署に届け出ました。警察署では注射器から覚醒剤反応が出たため、覚醒剤に使用されたものとして、注射器に付着していた組織をDNA鑑定しました。その結果を前科リストに照会をかけたところ、前科のある被告人が割り出され逮捕にいたったものです。なお、発見された注射器は平成26年以降に製造されたものでした。
被告人は中学卒業後、地元の電気工事の会社で働き、途中暴力団に所属したこともありましたが、現在は電気工事の会社を経営し、従業員も抱えるほどになっています。
離婚歴があり子供もいます。
被告人は10代より覚醒剤を使用しており、前科が5件あり、うち3件は覚醒剤取締法違反です。最近では平成22年に懲役2年の実刑判決を受け、平成23年に仮釈放されています。
本件の覚醒剤使用の動機は、「仕事がうまくいかずムシャクシャしてやった」と供述しています。
証人尋問
(弁護側情状証人 被告人の内縁の妻)
弁護人
あなたは被告人とどういう関係ですか。
証 人
内縁の妻です。
弁護人
いつからその関係ですか。
証 人
5年前からです。
弁護人
あなたは被告人が覚醒剤を所持あるいは使用したことを知っていましたか。
証 人
知りませんでした。
弁護人
被告人が社会復帰した際には、あなたは被告人が更生できるよう監護できますか。
証 人
行動を見て注意していきたいと思っています。
弁護人
あなたは、被告人と今後も交際するつもりですか。
証 人
本人の行動を見たうえで考えたいと思っています。
検察官
あなたは被告人と同居していますか。
証 人
同居はしていません。お互い近くに住んでいますので、お互いの家を行き来しています。
検察官
そのような関係のなかで、被告人は覚醒剤を使用しましたが、被告人が社会復帰してあなたはどのように更生に向けた監護をできますか。
証 人
今まで以上に行動を見て注意したいと思います。
検察官
あなたには家族がおられますか。おられた場合、被告人に対して理解をしてもらえますか。
証 人
娘と一緒に住んでいますが、娘は被告人の今回の件を怒っています。
検察官
あなたは、被告人と今後どのようにしたいと考えていますか。
証 人
最終的には同居して生活したいと考えています。
被告人質問
弁護人
平成23年の仮釈放後、今回の件は何回目ですか。
被告人
初めてです。今回こそ更生しようと思っていました。
弁護人
内縁の妻が証人として証言してくれましたが、それを見てあなたはどう思いましたか。
被告人
内縁の妻としっかりしたした生活をしたかった。申し訳ない。自分が逃げてしまった。後悔の思いでいっぱいです。
弁護人
覚醒剤を使用した際の状況はどのような状況でしたか。
被告人
覚醒剤の影響かと思いますが覚えていません。
弁護人
何故覚醒剤を使いましたか。
被告人
仕事で悩んでおり、ムシャクシャしていてつい使ってしまいました。
弁護人
社会復帰したら、薬物を断ち切るためにどのようにしますか。
被告人
医療機関を受診した後に、薬物依存を断ち切るために自助団体の「ダルク」にお世話になろうと思っています。
弁護人
現在あなたの会社の仕事はどうなっていますか。
被告人
今いる従業員で元請けからの仕事をこなしています。
弁護人
あなたがこのような状況では元請け会社も仕事をきるのではないですか。
被告人
元請けの社長は継続して仕事を出してくれると言っている。
弁護人
あなたの会社は借金がありますか。
被告人
金融機関から融資を受けています。
弁護人
あなたが服役することになれば、どうなりますか。
被告人
金融機関から融資を引き上げられことになり、事業継続できません。従業員も生活できなくなります。
検察官
あなたが覚醒剤を注射した注射器は犯行当時どこにありましたか。
被告人
車のダッシュボードの奥にありました。
検察官
注射器は平成26年以降に製造されたものですが、何故あなたの車にあったのですか。あなたが仮釈放されたのは平成23年です。前回以降初めて使用したというのは間違いないですか。
被告人
何故あったのか分かりません。
論告・求刑
検察官
再犯を繰り返しており、常習性が高い。
求刑 懲役3年
弁護側最終弁論
弁護人
被告人は更生の意志を示しており、出所後は「ダルク」で薬物依存を断ち切るという強い意識を示している。内縁の妻も監護を約束している。
社会のなかで更生を期すことが最良と考えるため、執行猶予付きの判決をお願いします。
裁判の向う側
つい先日、女優の三田佳子さんの次男が4度目の覚醒剤使用で逮捕され、横浜地裁は執行猶予と保護観察付の判決を言い渡しました。実刑にならなかったことに対して世間では軽い処罰ではないかという意見も出ています。
今回の事件も同様に覚醒剤使用は4度目となり、前回は実刑判決で服役していました。判決がどうなるか分かりませんが、いずれにせよ覚醒剤はこれっきりで断ち切ってほしいものです。支えてくれている内縁の妻や、自らの会社の従業員のためにも、これを最後にしてほしいと思います。
薬物依存事犯は再犯性が高いということはよく言われますが、他人に直接的な迷惑を掛けていないという意識も根底にあるのではないかとも思います。刑務所内でも薬物依存の更生プログラムがあるとのことですが、これが完全に機能していないのではとも考えてしまいます。
「ダルク」や「NA」は薬物依存に対する民間のリハビリ施設で、薬物依存症の者同士が一緒に生活しながらミーテングや薬物を使わない生活をすることで、薬物を断ち切ろうとする自助団体です。
同種事件の裁判を傍聴していると例えば大阪の西成ではお金さえあれば簡単に薬物が入手できる状況にあるそうです。薬物の資金が暴力団に流れているとも聞きます。
政府としては、民間の互助団体に頼るだけでなく、公の薬物依存根絶施設も考えてはいかがでしょう。
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