2019年5月23日木曜日

裁判傍聴のすすめ その4「セクハラ裁判」「裁判所あるある」

前回は「裁判傍聴のすすめ  その3「用語解説」「裁判所あるある」をご紹介させていただきました。
今回も、前回に引き続き刑事裁判をメインに「裁判ミニ知識」や、「裁判所あるある」をお話させていただきます。
私は裁判の傍聴を始めて約9ケ月たちますが、刑事裁判だけでなく民事裁判も傍聴します。民事裁判はブログで紹介するにはふさわしくないということで、記事にはしていませんが、それなりに民事の法廷にも入って傍聴しています。


民事裁判で多い事件は、いわゆる「過払い金請求事件」です。最近テレビでいろいろな法律事務所が「借金の過払い金返還請求引き受けます」のコマーシャルをしていますが、民事裁判ではこれが最も多いようです。裁判の件名は「不当利得返還請求」で、原告は過去に借金をした個人で、被告は消費者金融会社です。逆に消費者金融会社から個人に対する貸金の返還請求も二番目ぐらいに多いようです。次に多いの、は土地や建物の明け渡し返還請求事件のようですね。その他に離婚請求事件などの人事訴訟事件や、未払給料の請求、不当解雇撤回請求などの雇用関係事件、役所内や企業内のセクハラ事件も多いです。

民事裁判の法廷は、大半が原告の代理人だけが出廷することが多いです。裁判長は証拠書面を追認するのみで、次回期日を調整して終了というのが大半です。判決にも被告側が出廷しているということはほとんどありません。判決を被告人宛に送達して終了となるケースがほとんどのようです。

このように民事裁判は書面審理が大半ですが、離婚請求事件や雇用関係事件、相続関係の事件などは、原告、被告双方の当事者が出廷して、時には証人も出廷して争うという場面もあります。怒声が飛び交うということはありませんが、それぞれの言葉の端々に火花が飛び散っているということは伝わってきます。


セクハラ裁判事例

この訴訟では、原告の女性と被告の会社のセクハラ当事者となる年配の男性役員がともに出廷しての法廷となりました。原告女性は傍聴人や被告と顔を合わせたくないということで、入廷から原告証言まで遮蔽ボードで遮蔽されていました。

最初に弁護人が原告女性に質問を進めていきますが、被告の男性役員は徐々に顔がにがにがしく変わっていくのが分かりました。

証言を聞いていると、被告の男性役員が慰安旅行の際に原告女性に高価な物を買ってあげたのが事の始まりのようでした。原告女性はこのとき何故買ってくれるのか不信感はあったものの、品物をもらってしまったのがきっかけで、被告の男性役員は品物をもらってくれたから、自分に気があると勝手に思い込んだようです。
それ以降男性役員は被告女性に対して、馴れ馴れしくなっていったようで、徐々にエスカレートとして、言葉だけでなく被害女性の身体をさわるなどの直接的行為に発展していったようです。

被害女性は勤めていた会社の社長にそのことを訴えましたが、適切な対応はなく、男性役員はセクハラをやめることなく、逆にエスカレートしていったようで、原告女性は会社を
辞めざるを得なくなり、会社を退職しました。

次に被告の男性役員側の弁護人として、会社の顧問弁護士が質問にたちましたが、あまり
法廷に慣れていないようで、墓穴を掘るような質問を繰り返していました。
被告側の弁護士は、質問に時間を掛けすぎたため、当日予定の法廷が時間切れとなりました。次回以降に繰り延べかと思いましたが、裁判長が双方に和解を勧めてきました。

裁判所が和解への話し合いの場を提供するということで、閉廷後原告と被告、双方の弁護士は和解の場へ姿を消しました。
おそらく金銭での解決になったことと思います。


裁判ミニ知識

雇用関係事件の際の民事調停手続(簡易裁判所) (引用:最高裁判所リーフレット)

民事調停手続は、調停主任(裁判官または調停官)と一般国民から選ばれた調停委員2名以上が調停委員会を構成し、簡易な事案から複雑困難な事案まで実状に応じた話し合いによる解決を図る手段です。

双方が話し合うことを基本としており、必ずしも詳細な主張書面や証拠が必要とはされませんし、弁護士や社会保険労務士が調停委員となることもあるため、自分一人でも手続きを行うことができます。

相手方が話し合いに応じなかったり、合意に至らなかった場合は手続きが打ち切られることがありますが、裁判所が相当と認める解決案を示すことがあります。

民事調停で合意に至らなかった場合は、民事訴訟手続きに進みます。


裁判所あるある

裁判傍聴マニア

女優の常盤貴子さん主演の弁護士ドラマ「グッドライフ」が高い視聴率を上げているようですが、芸能記事によると常盤貴子さんは、裁判傍聴マニアだそうで、月に1回は東京地裁で裁判を傍聴しているそうです。

裁判傍聴マニアはどの裁判所でもそれなりの人数の人がいます。かくいう私もその一人です。京都地裁では、ほぼ毎日傍聴に来ている方が、10人から20人ぐらいようです。
ほぼ毎日来ている方は、70代から80代の男性が8割、女性が2割程度でしょうか。家にいても退屈なので、裁判所にきているという方がほとんどなのでしょう。皆さんはいくつかのグループに分かれているようで、法廷の時間が空いた時や、昼の休み時間に、裁判所の休憩場所でたむろして「さっきの法廷で検察官が右側にすわっていたのはなんでやろ?」とか、「なんで執行猶予がつかへんだんやろ」と話し合っておられます。

20代の若い方で定期的に来ている方もときどき見かけます。高齢の方達のグループに可愛がられながら傍聴しています。

京都地裁の先日の法廷では、傍聴席の70代くらいの男性が途中から軽いいびきをかいて昼寝を始めました。私の隣の席でしたので、そのいびきが気になって証人尋問が良く聞き取れません。弁護人もいびきに気付いてその傍聴人の方を見て、けげんな顔をしていました。

大津地裁にも、京都地裁ほどでもないですが、傍聴マニアで毎日ではないですが、定期的に来られている方が数人おられます。夫婦で来られている方もいます。

開かれた裁判所を目指すためにも、我々国民が裁判を傍聴することは大事なことだと思います。裁判所をけん制することができるのかどうか分かりませんが、大勢の国民が傍聴することは意義深いと思います。

裁判は平日しか開廷されませんので、働く世代が傍聴することは難しいかも知れませんが、平日の休暇で時間があったときに1~2時間だけでも裁判を傍聴することは勉強になると思います。
先日の過失運転致傷の交通事犯の裁判では、被害者の苦しみも充分に分かりましたが、新婚の若い被告人とその妻の苦悩もひしひしと感じられて、傍聴している私も、安全運転の大切さを再認識させられました。

是非一度裁判所に足を運び、裁判を傍聴してみてはいかがでしょうか。

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