2019年5月20日月曜日

【裁判傍聴記】初めての訪問営業で考え事をして運転していました

被告人は山間部の国道を、北へ向かって自動車で走行していました。走行途中に左にゆるやかに曲がるカーブに差し掛かりましたが、被告人はそのまま走行し、センターラインをオーバーして対向車線にはみ出し、対向車線からこちらに向かって走行してきた相手車両と正面衝突しました。被告人は客先のお宅への訪問営業は事故当日が初めてのことで、しかも単独での訪問でした。

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資料画像(by Pixabay)

罪 状 過失運転致傷
被告人 20代後半 男性
求 刑 禁固1年4月


 事件の概要 

被告人は山間部の国道を、北へ向かって自動車で走行していました。走行途中に左にゆるやかに曲がるカーブに差し掛かりましたが、被告人はそのまま走行し、センターラインをオーバーして対向車線にはみ出し、対向車線からこちらに向かって走行してきた相手車両と正面衝突しました。

事故後、速やかに相手車両に駆け付け、相手方の状況を確認して、救急と警察に通報しました。

相手方車両には、AとBの2名が乗車しており、両名ともに救急搬送されましたが、Aは股関節骨折で全治186日間、Bは頸椎損傷で63日間と診断され、両名とも重症でした。

警察による事故見分の結果は、被告人の「前方不注視」でした。

大学を卒業後、自動車のディーラーで働いている被告人は、普段は店舗の店頭での営業活動が中心でしたので、客先のお宅への訪問営業は事故当日が初めてのことで、しかも単独での訪問でした。時間的には余裕をもって出発したのですが、早めに到着したいという多少のあせりもありました。またどのようにお客さまに話を進めるのかなど考えながら走行していました。

気が付くと、相手方車両が直前で目に入りましたので、ブレーキを踏みましたが、間に合わず正面衝突しました。

ドライブレコーダーの記録から、被告人の事故直前のスピードは時速60kmでしたが、当該カーブの走行限界速度は時速51km~61kmと判定されましたので、限界ギリギリのスピードで走行していたことになります。

被告人が運転していた車両には、車線逸脱時に警報を発する機能が付いていましたが、警報には気付かず、気が付いた時には目の前に相手車両がありました。


 被告人質問 

弁護人
あなたは、自動車のデーラーで営業していたとのことですが、普段はどのように業務していました。
被告人
店頭での営業をしていました。

弁護人
事故当日は何故自動車を運転していましたか。
被告人
当日は初めてお客様のお宅に訪問しての訪問営業でしたので、自動車を運転して向かいました。

弁護人
運転していてあせりはありましたか。
被告人
時間的には余裕をもって営業所を出ましたので、特にあせりはありませんでしたが、早めに着いておきたいという気持ちはありました。

弁護人
何故事故に至ったと思いますか。
被告人
初めての訪問営業でしたので、どのように話を進めていこうかなど考えごとをしていて、カーブに気付くのが遅れたと思います。

弁護人
相手方の被害者の両名の方は重症を負って、Aさんはいまだに仕事に復帰できない状況ですが、あなたはどう思っていますか。
被告人
大変申し訳ないことをしたと思っています。

弁護人
被害者の両名の方にはお会いして謝罪しましたか。
被告人
Aさんは病院に見舞いに行って謝罪しました。Bさんは職場にお伺いして謝罪しました。

弁護人
被害者の方はどのように応対してくださいましたか。
被告人
お二人とも、穏やかに対応していただきました。

弁護人
損害賠償の話はどうなっていますか。
被告人
保険会社にお任せして進めてもらっています。治療費については、既に確定したものについては、お支払いできていると聞いています。慰謝料などについては、今後話を進めてもらえると聞いています。

弁護人
行政処分として免許停止になったと思いますが、会社はどういう扱いになっていますか。
被告人
今のところ営業所の店頭での営業を続けていますが、この裁判の結果によっては、懲戒解雇もあり得ると聞いています。

検察官
あなたは、自動車を運転する時はスピードを出すほうですか。
被告人
そんなに出すほうではありません。

検察官
ドライブレコーダーの記録では、時速60Kmで走行していますね。
被告人
そんなにだしているつもりは無かったのですが。

検察官
あなたには、前科はありませんが、検挙歴がありますね。
被告人
高校生の時に万引きで逮捕され、審判を受けています。


 論告求刑 

検察官
事故の結果は重大である。
求刑 禁固1年4月


 弁護人最終弁論 

弁護人
被害者に対して謝罪もし、損害賠償の話も進んでいる。
執行猶予付きの判決をお願いします。


 裁判の向う側 

事故の結果は重大で、被害者は2名とも重症を負われており、生活に相当な不便を負われていると思います。また、裁判では物損の状況は聞けませんでしたが、時速60km程度で衝突していますので、相手方、当方ともに車両は大破していて、双方とも廃車になる程度ではないでしょうか。

我々がふだん何気なく運転している自動車ですが、少しの油断で甚大な影響があることを実感して、私も充分留意して運転していこうととあらためて考えさせられました。

被告人は自動車デーラーに勤めていて、特に交通事故には厳しい職場だと思います。被告人が証言したように、懲戒解雇の処分も充分考えられます。

被告人は傍聴席で見ている限り、真面目で真摯な態度で受け答えしていました。事故の重大な結果も認識して反省していると思いました。まだまだ若いので、やり直すことは充分可能です。もちろん事故の結果は充分に反省したうえで、今後の人生を歩んでいってほしいと思いました。

※弁護人や検察官、被告人の発言は一言一句正確に記しているものでは、ありませんので
あしからずお願いします。

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