2019年5月19日日曜日

【裁判傍聴記】 なぜ赤信号で進入したのか分かりません

被告人の運転する自動車は赤信号を無視して横断歩道へ時速40Km程度で進入し、青信号で渡っていた男子児童と母親の乗る自転車の側面に衝突、自転車は衝撃で横転・転倒しました。自転車の2名は投げ出され、男子児童は全治6週間、母親は全治10日間の重軽傷を負いました。


罪 状 過失運転致傷
被告人 50代後半 女性
求 刑 禁固1年


 事件の概要 

事故は信号のある交差点で起こりました。
 
6月中旬の夕刻でした。スイミングスクールから自宅へ自転車で帰る途中の、小学校高学年の男子児童とその母親は交差点の歩行者用信号が青になっていることを確認して横断歩道を渡りました。

そこへ被告人の運転する自動車が赤信号を無視して時速40Km程度で進入し、男子児童と母親の乗る自転車の側面に衝突、自転車は衝撃で横転・転倒しました。自転車の2名は投げ出され、男子児童は全治6週間、母親は全治10日間の重軽傷を負いました。

被告人は、事故後速やかに被害者の救護と、警察・救急への通報を行っています。

付近にいた目撃者も、被告人の運転する自動車が赤信号で交差点に進入したと証言しています。

被告人は、35年間勤めた金融機関を定年退職し、寝具店に再就職しています。
 
被告人と父親が被害者宅を訪問して謝罪し、示談が成立しています。

被告人は本件とは別に、免許停止60日間の行政処分を受けています。
      
 弁護側証人尋問 ・・・被告人の実父

弁護人
被告人の事故前の運転はどうでしたか。
証 人
冷静に交通法規を守って運転していました。

弁護人
事故後被告人の運転する車に乗りましたか。
証 人
助手席に乗りました。

弁護人
事故後の運転に変化はありましたか。
証 人
冷静に運転していましたが、信号の確認は今までよりも確実にしていました。

弁護人
あなたと被告人と弁護士で被害者宅を訪問しましたが、様子を教えてください。
証 人
ご主人も交えお話し、穏やかな対応で、謝罪を受け入れていただきました。


 被告人質問 

弁護人
被害者に対して思うことは。
被告人
大変辛い思いをさせ申し訳ないことをしたと思っています。

弁護人
あなたは本件とは別に処分を受けていますか。
被告人
免許停止60日間を受けています。

弁護人
あなたは自動車は何に使っていますか。
被告人
勤めている寝具店への通勤です。

弁護人
いつから運転を再開しますか。
被告人
9月初旬からを考えています。

弁護人
運転に際して注意することは何ですか。
被告人
交通法規を守ることは勿論ですが、特に信号の確認に注意します。

検察官
あなたは何故信号が赤になっていることを見落としたのですか。
被告人
なぜ信号で進入したのか今でもわかりません。

検察官
現場は西向きの道路で西日がまぶしかったことはありましたか。
被告人
あまりよく覚えていません。

裁判官
赤信号の見落としの原因は何だったんでしょうか。
被告人
おぼろげでわかりません。

裁判官
原因がわからないのであれば、次も信号無視するではないですか。
被告人
今後は信号を確実に見て、確実に守りますので大丈夫です。


 論告求刑  

検察官
禁固1年
被害者の傷は全治6週間と重く、結果は重大。    


 弁護人最終弁論 

弁護人
被告人は無事故無違反で、今回初めての事故であり反省している。
被害者とは示談も成立しており、罰金刑を求める。


 裁判の向う側 
 
交通事故はいつ自らの身に降ってくるのか、予測がつかないというのも現実です。自動車を運転していれば、自分がいくら交通法規を守っていたとしても、もしかしたら加害者になるかも知れないとしいう現実もあります。

今回の事故で注意したいのは、被告人の証言「なぜ赤信号で進入したのか分かりません。」の証言です。被告人は証言台で首をひねっていました。

赤信号で進入した原因が自分でもわからない人に運転させていいのですか。

西日がまぶしかったとか、助手席に気をとられたとか、何か原因がわかれば対処できるでしょうが、原因がわからないという人に運転を再開させて良いでしょうか。「睡眠時無呼吸症候群」はこのような症状があると聞きます。被害者・犠牲者を出さないためにも、法律の限界を超えてとれる方策はないのだろうかと考えてしまいます。

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