2019年5月20日月曜日

裁判傍聴のすすめ その2 「用語解説」「裁判所あるある」

前回は裁判傍聴の注意事項や、法廷手続きの流れについてお話しました。

今回は、刑事裁判をメインに法廷用語の解説や、「裁判所あるある」などをお話させていただきます。


 法廷用語の解説 

始めは法廷用語の解説からです。
今回も、最高裁判所発行の「法廷ガイド 裁判を傍聴する方々のために」をベースに、解説していきます。

主尋問・反対尋問

証人を申請した側が最初に行う尋問が主尋問、その後に相手方が行う尋問が反対尋問
弁護側が証人を申請した場合は、先に弁護人が主尋問を行い、その後検察官が反対尋問を行います。

証人尋問では、尋問に入る前に「包み隠さず、真実だけを証言します」という証言をします。

主尋問は、自分が申請した証人から有利な証言を得ようとする尋問で、証人の証言の一語一句が判決の量刑に係わりますので、検察側・弁護側双方が慎重に尋問を進めます。

反対尋問は同様に、相手方の主張を覆すべく尋問を進めることとなります。

証人尋問と被告人質問

尋問は、出廷申請した証人に対し行われるものですが、黙秘権を行使することはできません。また虚偽の証言をすると偽証罪に問われる場合もありすので、拘束力の強いものと言えます。もっとも証人が自分の発言によって家族などが罪に問われる場合に限って、証言を拒絶できる証言拒絶権を行使できる場合もあるようです。
また「記憶にありません」「わかりません」は咎められることはないようです。

一方被告人質問は、事前に裁判長より黙秘権の行使について告げられるように、弁護人や
検察官や裁判官の質問に対して黙秘することができます。ただし、その黙秘が判決に有利に働くのか不利に働くのかは未定です。


誘導尋問

尋問する人が期待する答えが、すでに質問の中に暗示されているような質問。その答えにならざるを得ない内容の尋問を言います。つまり、その法廷での証拠として答えを導きたいときに行う尋問です。


公訴事実

検察官が読み上げる起訴状に書かれている犯罪の内容で、これを検察官が法廷で立証しなければなりません。


甲号証・乙号証

検察官が本法廷で証拠調べを請求する証拠のうち、目撃者や被害者の供述調書等が甲号証で、被告人自身の戸籍等の身上経歴や供述調書等が乙号証です。裁判では「甲1号証」「乙5号証」などと呼称されます。


同意・不同意

相手方が提出した書証を本法廷で取り調べることを認める場合は「同意」、反対する場合は「不同意」と述べます。(書証は、原則として相手方の同意がなければ証拠として、本法廷で証拠とすることができません。)
法廷では、弁護人が「不同意」とした証拠は、検察官は書証から外して裁判所に提出します。


然るべく

証人等の申請に対して、その是非判断を「裁判長の判断に委ねます」にいう場合、裁判長から問われた側は、「然るべく」と答えます。「裁判長の法廷指揮に任せます」ということですね。


論告求刑・弁論

法廷での証拠調べが終わった後に、検察官が事実や法律の適用などについて述べる最終意見が論告(刑についての意見が求刑)、弁護人の最終の意見陳述が弁論(最終)

検察官は論告で立証できた犯罪事実や、適用する法律等について述べた後、求刑で量刑を
述べます。量刑は懲役5年等の刑罰の程度です。

弁護人は、論告求刑に対して、検察官が述べた犯罪事実に対する反証や、情状を述べて、
反証については無罪を主張する場合もあり、情状として執行猶予付き判決をもとめたり、
減刑を求めたりします。


情状

犯行の動機や被害弁済の有無など、刑を決めるうえで参考となる事実。情状のなかには、
被告人が社会で更生する際に再犯しないよう監護する親族の有無や、被告人の事件当時の精神状態などによる責任能力の有無、被害者に対する被害弁済の状況など、量刑の判断の基となる事実を言います。


懲役と禁固

裁判で刑が確定した受刑者を、刑務所などの受刑施設に拘禁して罪を償わせるものです。

このうち懲役刑は刑務所で強制的に刑務作業をさせるものです。作業内容として木工や炊事、掃除や工場での労働などがあります。受刑者が働くと月5000円くらいのお金が支払われます。懲役刑が終わると働いたお金をもらって出所することになります。

一方、禁固刑は、「刑務作業のない身柄拘束刑」です。強制労働がない分、懲役刑より軽い刑罰とされています。


 裁判所あるある 


テレビ取材

裁判員裁判や、重大な裁判が行われる場合に、テレビ取材が入ることがあります。この場合は、開廷前の被告人も裁判員も入っていない法廷、つまりプロの裁判官と検察官、裁判所書記官、弁護人(入らない場合もあります)、傍聴人のうちテレビ撮影されてもよい人達
のみがいる状態で約2分間のみテレビ撮影がはいります。NHKの夕方のニュース等で流れるものがそれです。
傍聴人は後ろ姿だけですので、顔が映ることはありません。


被告人の入廷時の拘禁

被告人が、拘置所あるいは警察の留置場から法廷に引致(強制出頭させること)されてくる際には、手錠・腰縄を掛けられ、2名の刑務官または警察官によって法廷内に連行されてきますが、拘置所と警察署の留置場では手錠・腰縄の掛け方が異なります。

拘置所から連行される際には、手錠と腰縄のみですが、全ての警察署ではありませんが、警察の留置場から連行されてくる場合は、手錠と革製の腰ベルト、腰縄で連行されてくる場合が多いです。警察の留置場の革製の腰ベルトは移送中の逃走を防止する意味が強いと
いうことだそうです。


わいせつ事件等の被害者への配慮

わいせつ事件等では、開廷宣言をした後に裁判長が、被告人を含めた法廷内の関係者全員に対し、事件の被害者の氏名や個人を特定できる内容は発言しないよう求めます。これは被害者に対するプライバシー保護の観点から行っているものです。
ところが、一度弁護人がうっかり氏名を言ってしまったことがあり、弁護人は平謝りして
いました。


裁判員裁判の被告人の服装

大津地裁では、裁判員裁判の場合、被告人に恐らく古着屋で仕入れたものであろうと思われる背広上下を着させて入場させます。ネクタイまではさせませんが、一応正装で裁判員に対して配慮しているようです。


外国人の被告人への対応

外国人の被告人に対しては、法廷通訳人がつきます。従って通訳をとおしての質問になりますので、時間がかかります。法廷専門の通訳ですので間違いはないと思いますが、言葉のセンテンスの長短が極端に違う場合も時々ありますので、ちゃんと伝わっているのだろうかと心配になることもあります。


今回はここまでとさせていただきます。

次回は「裁判ミニ知識」や、「裁判所あるある」をお伝えできればと思います。

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